研究課題/領域番号 |
25860176
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 登紀子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10415531)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 睡眠相後退症候群 / 概日リズム睡眠障害 / アデノシン受容体 |
研究概要 |
人間は朝に目が覚めて活動し、夜に睡眠をとって休息するという24時間周期のサイクルを、日々繰り返しながら生活している。体内時計の異常は概日リズム睡眠障害を引き起こすが、最も発症率が高い睡眠相後退症候群(DSPS)は、不眠患者の6-16%を占める。その症状は、本人の意志に関わらず、明け方まで眠れず、午後まで起きられないというものであり、社会生活に深刻な支障をきたす。しかし現在までのところ、DSPSに関する研究は臨床研究に限られており、発症機序の詳細は不明である。一方、実験動物を用いた研究において、断眠により前脳基底部からのアデノシン放出とアデノシンA1受容体の活性化が引き起こされることが報告されており、睡眠のホメオスターシス制御には、アデノシン受容体を介した神経情報伝達が関与していると考えられている。このことから申請者は、DSPSにおける睡眠ホメオスターシス制御の破綻に脳内の細胞外アデノシン及びその受容体のシグナル伝達異常が関与している可能性を考え、それについて検証した。 申請者の前所属研究室により、時計遺伝子clockの変異マウスを離乳まで恒明条件で飼育することで、DSPS様の行動リズムを示すことが報告されている。本研究では、clock変異マウスを入手し、交配を行い、その再現性がとれることを確認した。次いで、前脳基底部におけるアデノシンA1受容体量をさまざまなパターンで注意深く検討した。野生型(明暗飼育及び恒明飼育)及びclock変異マウス(明暗飼育及び恒明飼育の中でDSPS症状を示さなかった個体)では三時間の睡眠剥奪によりアデノシンA1受容体量の上昇が見られたが、DSPS症状を示すclock変異マウスではそれが見られないという興味深い結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように、DSPSの睡眠ホメオスターシス制御の破綻に脳内の細胞外アデノシン及びその受容体のシグナル伝達異常が関与している可能性を検証するのが本研究の目的であった。25年度はコントロールに比較してDSPS症状を示すマウスのみで睡眠剥奪によるアデノシンA1受容体量の上昇が見られないという結果が得られ、DSPSへのアデノシン受容体の関与を示すことができた。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DSPS発症にアデノシン受容体が関与していることを示すことができたので、今後は細胞外アデノシン濃度の検討を行う。また、ヒトでは24時間睡眠剥奪を行っているので、マウスでもその条件に近づけることで、更なる詳細な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの脳内前脳基底核付近をくり抜いて定量PCRを行うことでアデノシン受容体のDSPS発症への関与を示すことができたが、睡眠剥奪によるアデノシン受容体の増加は脳の部位によって大きく異なるという報告が出ている。今後は脳スライスを用いたin situハイブリダイゼーションにより、より詳細な脳部位の特定を目指すこととした。 脳スライス作製とin situハイブリダイゼーションに用いる試薬等の物品費として次年度使用額を活用する計画である。
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