研究課題
本研究計画では、心臓自律神経系の活動に着目し、親と独立した環境で発生・生育可能な透明メダカを用いて、映像により自律神経機能を獲得する時期を同定し、環境擾乱による自律神経応答評価と血清内で変動するペプチド因子を探索する、ことを目的とする。もって、乳幼児期の自律神経機能獲得における発育過程と環境が及ぼす影響のメカニズムについて明らかにする。本研究成果が、最終的に個体レベルでのストレスや環境応答という大きな現象や健康についての社会問題の一端をそのメカニズムから迫ることができる点で、本研究は非常に意義がある。当初平成25年度から26年度の2年間の予定であったが、研究計画変更により、平成25年度から27年度の3年間で実施する。平成26年度は、まず自律神経の機能獲得評価として、メダカ成魚心臓からRNAを抽出し、心臓において発現しているアドレナリン受容体およびアセチルコリン受容体のうち、adrb1及びachr2bの配列を単離した。次に、得られた配列をもとにin situ hybridization用のプローブを作製し、心臓形成初期時のメダカ胚(st.24, 37)、及び稚魚(生後1日)において、in situ hybridizationにより遺伝子発現を評価した。しかしながら、メダカ胚及び稚魚のどちらにおいても、今回作製したプローブでの遺伝子発現を検出できなかった。また、昨年度環境条件として新たに設定した放射線刺激を用いて、心拍解析と全身切片の作製、および解析を行った。次に、血清内の分子変化探索のために、メダカSK2系統成魚からの採血を実施し、1回当たり2μリットルの抹消血液を採取する系を確立した。
3: やや遅れている
平成26年度は、計画に示されているもののうち、アセチルコリン受容体やアドレナリン受容体の遺伝子の単離およびin situ hybridizationによる遺伝子発現評価については予定通り実施した。また、メダカから血液サンプルを採取する手法を確立し、昨年度新規に見いだした放射線刺激を用いて全身での解析と血液の解析を開始した。さらに、これらの成果を国内学会で発表した。以上のことについては、当初の研究計画通りに進行したと考える。一方で、昨年度実施した放射線刺激により、部分的な放射線刺激が被照射部位に加えて、自律神経や免疫応答等の全身性応答を生じさせている可能性を新たに見いだしたことから、計画を一部変更し、全身切片による解析を新たに実施した。その結果、当初の研究計画で実施予定であった国際学会での発表及び学会誌への投稿が年度内に終了しなかった。本研究は、平成25年度から26年度の2年間で実施する計画であるが、平成27年度にも研究を遂行することとなり、従って、当初の予定より研究はやや遅延していると考える。
平成25、26年度に確立・実施した系を用いて、環境が個体へ与える影響を評価する。特に、全身性の応答の解析を全身切片を利用した3D構築による解析と採血した血液の血球や血清成分の解析により実施する。本研究によって得られた成果を国際学会で発表し、また学会誌への投稿を行う。
平成26年度に放射線照射後の心拍解析を行い、その結果をもとに刺激後の自律神経への影響を解析し、国際学会での発表及び学会誌への投稿をする予定であったが、当初の予定と異なり、昨年度実施した放射線の部分照射刺激により、被放射部位に加えて全身性の環境応答として血液の形状等に影響が生じたことから、計画を変更し、新たに全身切片によるメダカ組織の3D構築による解析を血液の解析に先んじて行うこととしたため、計画がやや遅延し、未使用額が生じた。
平成27年度は、放射線の部分照射刺激による全身性の環境応答の解析として、全身切片によるメダカ組織の3D構築による解析と環境刺激の個体発達への影響を解析し、国際学会での発表及び学会誌への投稿に充てる。
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