癌と概日リズムの関連は、疫学研究や、最近の分子生物学的研究により、徐々に明らかとなっているが、不明な点は多い。我々は癌と概日リズムの直接のクロストークを解明する糸口として、がん抑制遺伝子pRbによる概日リズム遺伝子の制御機構を解明することを目的とした。 pRb欠損マウスは胎生致死のため、成体マウスにおけるpRbの機能を調べるために、Vgat-Cre;Rbflox/floxマウスを作製した。しかし、このマウスは生後まもなく死亡してしまい、概日リズムの解析には不向きであった。そこで、現在はAlbumin-Cre;Rbflox/floxマウスを用いて、肝臓特異的にpRbを欠損させ、pRbによる概日リズム遺伝子への影響を検討するため、マウスの交配に取り掛かっている。 また、pRbによる概日リズム制御機構の解析のため、培養細胞(野生型マウス胎児線維芽細胞)を用いてpRbを発現させ、Per2プロモーターへの影響を検討した。その結果、pRbの存在下で約20%のPer2プロモーター活性の上昇が見られたため、そのメカニズムの解析を試みた。pRbの主要なパートナーであるE2Fや、PMLは、pRbの細胞周期制御の機能に非常に重要である。そのためこれらの蛋白質を培養細胞に発現させ、Per2プロモーター活性を測定した。しかし、Per2プロモーター活性に関して、pRbとの関連を示唆するデータは得られなかった。 実験が当初の計画どおりに進まなかったため、代替案としてpRbを発現させた時の他の概日リズム遺伝子の発現量をqPCR法により定量した結果、いくつかの転写抑制因子の発現が減少していることにより、Per2プロモーター活性が上昇しているのではないかという知見が得られた。今後はこの得られた知見を、そのプロモーター解析等と組合せ、詳細に解明していく予定である。
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