研究課題/領域番号 |
25860183
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
室冨 和俊 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究員 (40635281)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 血管障害 / 体内時計 / 行動リズム / マウス |
研究概要 |
本研究では糖尿病性血管障害の発生と体内時計の異常との相互関係の解明するために、動物個体で糖尿病発症とそれに伴う血管障害および時計遺伝子発現や行動パターンの異常を確認する必要がある。そこで本年度は2型糖尿病モデルマウスを用いて、当該分野で既に汎用されている糖尿病病態解析法および行動リズム解析法の確立を行った。当初はC57BL/6マウスへの高脂肪食負荷により2型糖尿病モデルの作製を予定していたが、高脂肪食のような人為的処置を施すよりも安定した病態を呈すると予想された自然発症型2型糖尿病モデルであるTSODマウスを利用した。 対照であるTSNOマウスと比較した結果、5週齢から体重、精巣上体脂肪量、血漿トリグリセリド量、血漿コレステロール量が増加しており、若齢より高度に肥満を呈することが示された。糖尿病発症の有無を判定するために、HbA1cおよび随時血糖を測定したところ、HbA1cは5週齢から増加、随時血糖は6週齢以降徐々に増加し、13週齢で高度に増加した。さらに、5週齢から同一個体で経時的に糖負荷試験を行ったところ、耐糖能異常は11週齢で観察されたことから、TSODマウスはおよそ11週齢で明らかな糖尿病様フェノタイプを呈することが示された。 マウスは約24時間周期の行動リズムをもち、明期にはほとんど活動しない。しかし、高脂肪食負荷マウスは明期に摂食する割合が増加し、摂食パターンの減り張りがなくなる。そこで、TSODマウスの行動リズムを解析するために、摂食パターンと相関する飲水パターンを3時間間隔で測定した。その結果、3および6ヶ月齢のTSODマウスの明期中飲水量の割合はTSNOマウスと同程度であったが、ZT 9-12 h、つまり暗期直前に飲水する割合は対照の約2.5倍となり、TSODマウスの行動パターンはTSNOマウスとは異なる可能性を初めて見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は糖尿病病態の解析に時間を要したが、使用した2型糖尿病モデルマウスの病態は、環境要因にも依存するため他施設で得られている実験手法を踏襲し、結果の再現性を得る必要があり、それらについては良好な結果が得られている。さらに、糖尿病発症に関わるフェノタイプが現れる週齢を把握することができ、糖尿病発症と血管障害の因果関係を説明する上で必要な知見を得ることができたため、概ね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
高齢TSODマウスの腹部大動脈の時計遺伝子発現およびeNOS、ET-1発現をリアルタイムPCR法で解析し、時計遺伝子発現変化の有無と血管障害度合いを評価する。さらに、糖尿病病態と密接に関わる臓器(脂肪、肝臓、腎臓、膵臓)の血管を磁気ビーズで採取する方法を検討し、同様の方法で遺伝子発現解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度、糖尿病モデルマウスの血管における時計遺伝子発現およびeNOS、ET-1発現をリアルタイムPCR法で解析し、時計遺伝子発現変化の有無と血管障害度合いの評価を実施する必要があるため。さらに、同様のマウスから臓器(脂肪、肝臓、腎臓、膵臓)の血管を磁気ビーズで採取する方法を確立し、得られた血管の遺伝子発現や培養方法の予備実験を行う。 大型備品購入の予定はなく、実験動物、遺伝子発現解析試薬、細胞単析・解析試薬等の消耗品を中心に使用する事を予定している。尚、研究成果が纏まり次第、論文作成の為の英文校正費や学会発表時の旅費に充てる予定である。
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