研究課題
平成27年度は、肺高血圧に続発性の右心肥大から右心不全への変遷機構に関する研究をおこなった。肺高血圧モデルとしてこれまで用いた慢性低酸素負荷およびモノクロタリン肺高血圧ラットに加え、ヒト肺高血圧症にみられる肺血管閉塞病変を呈するSugen Hypoxia(SuHx)ラットモデルを対象に右心肥大適応期から破綻期にかけての生理学的パラメータの取得ならびに右心機能と血管機能の経時的な変化を明らかにすることを目的とした。SuHxラットはVEGFR阻害剤であるSu5416をラットに皮下投与後に低酸素下で3週間飼育し、その後常酸素下で飼育することにより肺血管閉塞病変を来すことが知られている。本研究ではこのときの呼吸動態の変化について覚醒ラットにおけるホールボディープレチスモチャンバー法により検討した。その結果、SuHx4週群では肺高血圧ならびに右心肥大が生じているが、分時換気量・呼吸数・酸素摂取量・二酸化炭素排出量は変化していなかった。一方、SuHx8週群では、肺高血圧ならびに右心肥大の程度が悪化し、呼吸数の顕著な増加が生じていたが、酸素摂取量・二酸化炭素排出量は保たれていた。次に、モノクロタリン5週群およびSuHx8週群において、血管機能評価を放射光微小血管造影によりおこなった。その結果、両群では同程度の右心室収縮期圧および右心室重量の増加が生じ、右心機能の低下が観察された。また、右冠動脈の第二、三分岐においてACh依存性血管拡張、およびNO応答性の低下が観測された。また、MCTラットではNOS/COX阻害により、SuHxラットではEDHF阻害により血管攣縮が観察された。以上のことから、肺高血による右心負荷の増大により、右冠動脈の血管拡張機能が低下していることが明らかになった。本研究により重症肺高血圧患者における右心不全の発症に右冠動脈の血管機能低下が関与している可能性が示唆された。
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