研究課題/領域番号 |
25860185
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
市村 敦彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10609209)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炎症 / 薬理学 / 糖尿病 / 肥満 |
研究概要 |
本研究の目的は、既に取得済のマクロファージ浸潤及びそれに伴う組織の炎症を抑制出来るPAI-1 阻害薬開発候補化合物を用いて、PAI-1の関わる炎症性疾患モデルを用いて、PAI-1阻害による抗炎作用の分子メカニズムを解明することである。 本研究では、病態モデルにおける抗炎症効果及び、治療効果を示す知見が得られ、PAI-1が相互作用する分子や関連する細胞内シグナルを解明し、論文を発表することで研究目標を達したと判断する。今年度は、各種の炎症モデルに対するPAI-1阻害薬の投与を行い、薬効を評価できるモデルを探索した。当初予定していた虚血再灌流モデル及び創傷治癒モデルに対する投与を行った結果、一定の効果を認めたものの、その治療効果は限定的であり、再現性も弱いことがわかった。これらのモデルに加え、高脂肪食(HFD)投与による肥満モデルに対する投与を検討した。肥満時の脂肪組織は炎症状態にあり、脂肪組織中に浸潤したマクロファージが炎症を惹起している。また、肥満時の脂肪組織ではPAI-1が高発現していることが知られており、脂肪由来のPAI-1がマクロファージを誘引して炎症を引き起こしていると考えた。PAI-1阻害薬の投与を行った結果、脂肪組織におけるマクロファージマーカー遺伝子の発現が低下し、空腹時高血糖が有意かつ顕著に改善した。また、肥満及び白色脂肪組織重量増加を改善した。これらの結果から、PAI-1阻害薬が新しいクラスの糖尿病治療薬としての可能性を持っていることが明らかとなった。また、in vitro脂肪細胞分化モデルにおいて、PAI-1阻害薬投与による分化抑制効果を示唆する結果を得ており、さらなる分子メカニズム解析を要する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
炎症性疾患モデルとして、当初予定していた、腎虚血再灌流モデル及び創傷治癒モデルに加えて、高脂肪食負荷による肥満モデルに対するPAI-1阻害薬の薬効について評価することが出来、高脂肪食負荷肥満モデルに対する有意な肥満及び糖尿病様症状の寛解効果を見出すことが出来た。更に、分子薬理学的メカニズムを示唆するデータを得ており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
有意な治療効果を示すin vivoモデルの探索は予定通り終了したため、今後は分子薬理学的メカニズムの解明を行う。具体的には、in vivo脂肪細胞分化モデルを用いてPAI-1の発現及びその低分子化合物を用いた抑制が脂肪細胞分化に与える影響を観察する。更に、siRNAなどを用いた発現抑制手法などを組み合わせることによって、PAI-1の抑制がどのような分子機序により脂肪細胞分化をコントロールするのかを解明する。また、これと平行してin vivoにおける脂肪組織の分化に対するPAI-1阻害薬の効果を調べ、in vitroの結果と比較する予定である。また、脂肪組織や肝臓といったインスリン感受性組織中におけるマクロファージの浸潤を組織切片の染色により観察し、定量的に評価する。
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