研究課題/領域番号 |
25860188
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
THUMKEO Dean 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40372594)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | T細胞 / TCRシグナル / 免疫抑制剤 / アクチン / mDia |
研究概要 |
TCRシグナルはT細胞の発生及び活性化に不可欠であるが、そのシグナル伝達機構について不明な点が多く、カルシウムを標的とした免疫抑制剤以外の薬物は見つかっていない。申請者はこれまで、アクチン重合因子mDia1/3二重欠損マウスを用いることにより、TCRシグナルにはmDiaが促進的に働くことを見い出してきた。本研究では、さらにmDia DKOのT前駆細胞や末梢T細胞を用いて、TCRシグナル伝達におけるmDiaの分子作用機序を解析し、TCRシグナル伝達を分子レベルで包括的に理解することを目的としている。 本年度は、抗原提示細胞に模した脂質二重膜を用いて、T前駆細胞のTCR刺激を行い、全反射顕微鏡によるTCRマイクロクラスターの分子イメージングを行った。その結果、mDia1/3の二重欠損はTCR刺激依存的TCRマイクロクラスターの形成に影響しないものの、その動きを阻害することが分かった。さらに、F-actinの蛍光標識であるEGFP-lifeactを細胞に導入し、TCRマイクロクラスターと同時イメージングを行った結果、コントロール細胞で見られるTCRミクロクラスターとF-actinの連動が著しく阻害されていることを見いだした。一方、TCRシグナルにおけるmDiaのアクチン重合活性の重要性を直接に証明するために、アクチン重合活性を持たないmDia変異体のレトロウィルス作製に成功し、現在はそれを用いた機能的なレスキュー実験を試みているところである。以上の研究を通じて、mDiaは細胞骨格アクチンを介してTCRシグナルに関わっていることが明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画では、全反射顕微鏡を用いたTCR刺激依存的マイクロクラスターのライブイメージングとmDia1遺伝子導入による機能的なレスキューの検討でした。『研究実績の概要』の通り、mDia欠損によりTCR刺激によるTCR動態が阻害されることを同定し、さらにはF-actinの同時イメージングを行ったことによりmDiaはTCRシグナル伝達においてF-actinを介して関わっていることを明らかにした。また、mDia1を発現するレトロウィルス作製にも成功し、機能的レスキューを行っている。このこと、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は機能的レスキュー実験を完成させ、TCRにおけるmDia1/3のアクチン重合活性の重要性を直接に証明したいと考えている。また、TCR刺激によってmDiaがどのようにして活性化するのかを解明するために、生化学的実験を行い、mDiaと相互作用する分子の探索を行う予定である。一方、T細胞におけるもう一つのmDiaアイソフォームであるmDia2の機能を明らかにするために、T cell lineage特異的mDia2のコンディショナルノックアウトマウスの表現系を解析し、これまで得られたmDia1/3 DKOマウスの表現型との比較を行い、T細胞におけるmDiaアイソフォームの使い分けについて考察を行いたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が継続するため 研究解析に使うmDia DKO マウスを供給するためには、交配用やコントロール用マウスC57B6/J が年間には少なくとも100 匹が必要であるが、年間費用はおよそ50 万円とかなり高額である。また、分子イメージング実験は米国UCSF にて行うため、出張費用を50 万円/年の予算は確保したい。 一方、本研究はTCR シグナル伝達におけるアクチン重合を介したmDia の役割という新しい概念をより多くの研究者(他分野の研究者を含め)に広めるために、研究成果は積極的に国内で発表を行う予定である。そのために、10 万円を旅費として予定している。また、平成26年度は本研究の最終年度であるため、研究結果をまとめ、その成果を論文として発表することが今後の発展のためにきわめて重要であると考えており研究成果投稿料として10 万円の財源を確保したい。
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