研究課題
アミノ酸に対する細胞応答は、mTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル系が担っているが、アミノ酸の取り込みからmTORへ至る経路には不明な点が多い。そこで、アミノ酸トランスポーターLAT1の阻害薬と高感度化網羅的リン酸化プロテオミクスを駆使して、LAT1からmTORに至るシグナル経路を解明し、LAT1を介して引き起こされる細胞応答の全貌を明らかにすることを目的として研究を行った。平成25年度は、LAT1を介して引き起こされる細胞応答の全貌を明らかにするため、LAT1競合阻害薬であるBCHの存在下または非存在下でHeLaS3細胞をロイシンで刺激し、細胞溶解物から得られたリン酸化タンパク質を網羅的比較定量リン酸化プロテオミクスにより解析した。その結果、HeLaS3細胞においてロイシンによりリン酸化が促進されたタンパク質を520個同定した。得られたデータを遺伝子ネットワーク/パスウエイ解析ソフトIPAを用いて解析した結果、LAT1を介したロイシンの取り込みは、翻訳プロセスに関連するリン酸化タンパク質を制御するだけでなく、転写、細胞周期調節及び細胞構造など様々な細胞応答を担うタンパク質のリン酸化を誘導することを明らかにした。平成26年度は、癌治療の分子指標としてのLAT1の可能性を検討するため、LAT1競合阻害薬であるBCHと既知の抗癌薬(4種)との存在下でMIA PaCa-2細胞の細胞生存率を測定した。その結果、細胞生存率はBCH及び既知の抗癌薬単独と比較し、BCHとそれぞれ既知の抗癌薬との併用の方が低く、LAT1阻害薬による相加効果が認められた。以上により、LAT1からmTORに関与するシグナル経路の全体像を明らかにすることができ、LAT1阻害薬と抗癌薬の併用が有用である可能性が示唆された。
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