研究課題
急性腎障害における細胞周期調節因子p21活性化および細胞老化の意義について、科学研究費補助金を頂き、研究を進めた。申請した仮説に基づき、①細胞保護性タンパク質と相互作用をすることにより、抗急性腎障害作用を呈しているか、②生存細胞の細胞周期調節作用により障害を最小限に抑制するか、の2点について検討した。①において、Nrf2は、p21による抗急性腎障害効果に必須の因子ではないことが示された。また他の候補因子であったHIF-1、autophagyおよびミトコンドリア活性に関しても、明確な関与を示すデータは得られなかった。一方で、仮説②に関して、その関与を示す強力な証拠が得られた。すなわち、p21はプレコンディショニングなどの処置に伴い、一過性に速やかに誘導される。これにより、腎近位尿細管が一時的なG1期における細胞周期停止状態になる。これによりDNA修復機構が活性化され、続く急性腎障害に対して、保護的に働いていることが示された。以上の結果は、既にKidney International誌に掲載された。また、p21シグナル活性化近位尿細管細胞のfate-tracing法に関しては、Confettiマウスの近位尿細管におけるLoxP配列切断を目的として、2種類のCreマウスとの交配を行った。しかし、これらの近位尿細管特異的Confettiマウスは1ネフロン中の尿細管細胞群が単一の蛍光色で占められており、目的とするfate-tracingへの使用は不可能であった。目的の達成には、inducible Creマウスを用いる必要があり、予定年度中の検討は困難であった。腎障害発症後の薬理学的p21活性化をp21ペプチドにより行い、その予後を観察した。この計画では急性期の障害に対する抑制作用を期待したが、急性期よりもむしろ慢性期の保護作用を示唆するデータが得られ、更なる検証を継続中である。
すべて 2014
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Kidney International
巻: 85 ページ: 871-879
10.1038/ki.2013.496.