研究実績の概要 |
昨年度に得られた抗NOX1モノクローナル抗体を産生する9つのハイブリドーマから、特異性と力価に優れた2種のクローン (26B1, 31C1) を選抜し、限界希釈法によるスクリーニングを行い、それぞれの最終精製IgGを得た。本抗体を用いた免疫組織学的解析により、NOX1は大腸陰窩底部の上皮細胞に局在し、WGA陽性ムチンを含有する杯細胞には発現しないことを見出した。さらにNOX1はKi-67陽性細胞と共存することも見出した。このことから、NOX1は未分化型で増殖性の高い腸管上皮細胞に局在することが明らかとなり、これらの細胞において細胞増殖を制御する可能性が推測された。この知見は、先に報告されたNOX1欠損マウスで大腸粘膜修復が遅延することと関連する可能性がある (J Clin Invest. 123(1):443-54, 2013)。また一方で、NOX1は杯細胞に局在しないことから、単一細胞においてムチンの遊離に直接的に関与しないことも示唆された。これらの知見に加え、開発した抗体のうち26B1はNOX1強制発現細胞における活性酸素産生を抑制し、中和抗体として機能することを見出した。さらにこの抗体を用いた免疫沈降により、これまで不可能であった大腸組織ライセートからのNOX1精製に成功した。今後、生体組織内でNOX1と相互作用する未知タンパクの同定に繋げる予定である。炎症性腸疾患におけるNOX1の機能解析については海外研究グループに先行されたものの、抗NOX1モノクローナル抗体の開発により新しい独創的な知見が得られた。
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