研究課題/領域番号 |
25860192
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
細野 加奈子 北里大学, 医学部, 助教 (80532556)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リンパ管新生 / プロスタグランジン / 慢性炎症 / ノックアウトマウス / がん / リンパ節転移 |
研究概要 |
がんのリンパ行性転移は血管と同様に間質ストローマさらには腫瘍にリンパ管が新生し、それへ腫瘍細胞が移行するとの見方が重要視されてきており、VEGF-C/D-VEGFR-3 を基盤とするシグナル伝達経路が腫瘍に随伴するリンパ管新生においても極めて重要であることが示唆されている。我々はこれまでにプロスタグランジン(PG)がリンパ管新生の制御に役割を果たすことを報告してきている。一方、がんの血行性転移では、あらかじめがん細胞が転移しやすい環境“premetastatic niche”を構築しそこにがん細胞が転移巣を形成することが分かってきているが、リンパ節において同様のpremetastatic niche が成立するかについては知見が乏しいことから、申請者はPG がpremetastatic niche 形成に役割を持ち、実際に転移を制御しているかについて検討を行うこととした。 これまでにLewis Lung Carcinoma (LLC) 細胞を用いた皮下接種モデルでの検討では、腫瘍およびストローマ組織に多くリンパ管が新生してくることが確認され、さらにこの新生リンパ管はCOX-2阻害薬celecoxibの投与により有意に抑制されることを明らかとしていたが、さらにトロンボキサン受容体(TP)ノックアウトマウスに接種した腫瘍リンパ管染色像を野生型と比較した結果明らかな減少が観察され、腫瘍リンパ管新生にトロンボキサン受容体シグナリングが関与していることが明らかとなった。加えて大腸癌細胞移植による腸間膜リンパ節転移モデルでも検討を開始している。また、LLC皮下接種モデルに加えて腫瘍リンパ新生をミミックするマトリゲルモデルや創傷治癒モデル、腹膜炎モデル等を用いて炎症性肉芽組織に集族する細胞群を免疫組織化学的手法等を用いて検討したところ線維芽細胞の増加やマクロファージ、好中球、T細胞の集族が観察された。また、経時的に間質構成細胞とVEGF-C/VEGF-Dとの2重染色を行い、リンパ管新生の司令塔細胞を特定するため検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、腫瘍増殖を経時的に調べ、腫瘍及び間質ストローマにおけるリンパ管の新生をを免疫組織化学的に評価するとともに既存のリンパ管新生因子(VEGF-C, VEGF-D, FGF, EGF 等)の発現についても免疫組織化学、real time PCR 等で経時的に検討した。加えて炎症性肉芽組織に集族する細胞群の評価も行った。これらの評価はすでにPG受容体ノックアウトマウスを用いての検討も進めている。今後は、転移前のリンパ節に集族する細胞について詳細な検討を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている皮下接種モデルによる検討により、集族する細胞の機能的役割とPG受容体シグナルの関係を詳しく検証していく。また、すでに腸癌細胞移植による腸間膜リンパ節転移モデルでの検討を開始しているが得られるデータの精度をさらに高めていく必要があり、手技の安定をはかり詳細な検討を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究遂行に向けて予算を繰り越した。 実験動物の購入および飼育費用と一般試薬、抗体の購入に使用する。
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