研究課題/領域番号 |
25860195
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
五十嵐 信智 星薬科大学, 薬学部, 助教 (40409363)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アクアポリン / 下痢 / 便秘 |
研究概要 |
最近、食の欧米化や心因的ストレスの増加などに伴い、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などの消化器疾患患者が増加の一途をたどっている。一方、癌患者の増加により抗癌剤や麻薬性鎮痛薬モルヒネなどが緩和医療で積極的に用いられているが、治療中にはほぼ100%の患者に、副作用として激しい下痢や便秘が誘発される。これらの下痢や便秘の発症要因については不明な点が多く残っており、これまで様々な視点から研究が行われている。しかしながら、その原因解明には至っておらず、現在までに根本的な治療法はない。そこで本研究では、消化器疾患に対する新規治療薬の開発を目指すに先立ち、種々の原因で発症する下痢や便秘に対する大腸の水チャネルアクアポリン(AQPs)の役割について明らかにすることを目的とした。 まず、腸管の水輸送におけるAQP3の役割およびその発現変動メカニズムについて、現在用いられている瀉下剤(センノシドA)を用いて調べた。その結果、センノシドAは大腸のAQP3の発現量を低下させることにより、腸管側から血管側への水の移動を抑制し、瀉下作用を示していることがわかった。さらに、センノシドAは腸内細菌によりレインアンスロンへと代謝された後、大腸のマクロファージを活性化させ、PGE2の産生および分泌を亢進させること、また、このPGE2はパラクライン因子として大腸粘膜上皮細胞に作用し、AQP3の発現を低下させていることを明らかとした。 これらの知見は、大腸のAQP3が新規瀉下剤のターゲット分子となり得ることを意味している。したがって、AQP3発現制御機構をより詳細に解明することにより、新規瀉下剤の開発が可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは、体内の水の輸送に重要な役割を担っている水チャネルである腸管のアクアポリン(AQPs)に着目し、新規瀉下剤の開発を目指した。その結果、大腸にはAQP3が優位に発現しており、その発現の変動により、糞中水分量が変動することを明らかにした。また、大腸AQP3の発現低下メカニズムについても解明した。これらの知見は、新規瀉下剤を開発する上で、非常に有用な情報となり得る。さらに、本知見は、大腸のAQP3が新規瀉下剤のターゲット分子となり得ることを意味している。したがって、今後、AQP3発現制御機構をより詳細に解明することにより、新規瀉下剤の開発が可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
癌患者の増加により麻薬性鎮痛薬モルヒネなどが緩和医療で積極的に用いられているが、治療中にはほぼ100%の患者に、副作用として便秘が誘発される。これまでの研究成果より、便秘の誘発にも大腸のAQP3の発現変動が関与している可能性が考えられた。今後、便秘症における大腸AQP3の役割について明らかにする。また、潰瘍性大腸炎モデル動物の作製に成功したため、本モデル動物を用いて、下痢の発症における大腸AQP3の役割について調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね順調に研究費を使用しているが、試薬の購入時に半端な金額が残ったため、次年度使用額が生じた。 ラット組織あるいはHT-29細胞からウエスタンブロッティングおよびPCRを行うに当たり、試薬代および消耗品が必要となる。また、メカニズム解析に当たり、トランスフェクションやDNAマイクロアレイ解析などを行う予定である。
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