研究課題
申請者はこれまでに、便の水分量を最終的にコントロールしている大腸に水チャネルアクアポリン3(AQP3)が優位に発現していることを見出し、AQP3が便の水分量を変動させる極めて重要な因子であることを明らかにした。本研究では、種々の原因で発症する下痢や便秘においても、AQP3の発現や機能の変化が重要な役割を担っているのではないかと考え、その立証を試みた。まず、便の水分量が急激かつダイナミックに変化した場合に、大腸AQP3の発現がどのように変動するかを瀉下剤であるセンノシドAを用いて調べた。その結果、センノシドAは大腸のAQP3の発現量を減少させることにより、腸管側から血管側への水の移動を抑制し、瀉下作用を示していることが明らかとなった。また、このメカニズムとして、マクロファージから分泌されるPGE2が重要な役割を担っていることが明らかとなった。次に、便秘症の発症と大腸AQP3との関係について検討した。検討にあたっては、臨床で問題となっているモルヒネ誘発性便秘症に焦点を当て、解析を行った。その結果、モルヒネは大腸におけるAQP3の発現量を増加させることにより、腸管側から血管側への水の吸収を促進し、便秘を発症させている可能性が示唆された。さらに、モルヒネは大腸からのセロトニンの分泌を亢進し、分泌されたセロトニンがセロトニントランスポーター(SERT)を介して大腸粘膜上皮細胞内に取り込まれ、AQP3の発現量を増加させたものと考えられた。本研究の結果から、下痢や便秘の発症メカニズムとして、大腸AQP3の発現変動が重要であることが明らかとなった。今後、大腸AQP3の発現制御機構を詳細に解明することにより、AQP3をターゲットとした瀉下剤や止瀉剤の開発が可能になるものと考える。
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Toxicol. Sci.
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10.1093/toxsci/kfv055
J. Ethnopharmacol.
巻: 152 ページ: 92-101
10.1016/j.jep.2013.12.055