研究課題
若手研究(B)
脳の学習・記憶の素過程はシナプスの伝達効率の変化(シナプス可塑性)にあると考えられている。その実験系モデルの1つとして長期増強現象(long-term potentiation:LTP)が知られている。LTPには新規蛋白質合成、さらにはシナプス形態の変化が必要であるが、どのような蛋白質が発現し、それらがどのような方法で神経細胞及びシナプスの性質を調節し変化させているのかといった詳細な分子メカニズムには、不明な点が多い。これまで、本研究代表者は2次元電気泳動法とMALDI/TOF-MSによる質量分析法を用いて、ニコチンの腹腔内投与による海馬LTP様作用発現時(Matsuyama et al, 2003)に新規合成される蛋白質として、分子シャペロンであるプレフォルディンを同定している。そこで、プレフォルディンのシナプス可塑性における役割を明らかにするため、本年度では以下の検討を行った。(1) 免疫組織化学法により正常マウス脳におけるプレフォルディンの発現を確認した。(2)正常マウスにニコチンを投与し、海馬LTP様作用発現時におけるプレフォルディンのmRNA及び蛋白質レベルの発現量の経時的変化を解析した。これらの結果、プレフォルディンは海馬に強く発現していること、ニコチンによりプレフォルディンが新規合成され、ニコチン投与24時間後にプレフォルディン蛋白質の発現量が最大になり、72時間後には通常レベルに戻ることが分かった。これにより、プレフォルディンは海馬LTP様作用発現に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
海馬LTP様作用発現に関与する蛋白質として、2次元電気泳動法とMALDI/TOF-MSによる質量分析法によって同定されたプレフォルディンをRT-PCR法及びウエスタンブロット法において確認することできた。さらにはプレフォルディンが海馬において強く発現していることからもプレフォルディンは海馬LTP様作用発現に関与している可能性が示唆された。今後は海馬LTP様作用発現時におけるプレフォルディンの役割の解析を進めていく。
(1)正常マウスにニコチン投与し、海馬LTP様作用発現時におけるプレフォルディンの発現調節機構の解析を行う。(2)シナプス可塑性障害系であるアルツハイマー病モデルマウスにおけるプレフォルディンの発現の検討を行う。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Neuroscience Letters
巻: 555 ページ: 18-23
10.1016/j.neulet.2013.07.036.
巻: 534 ページ: 85-89
10.1016/j.neulet.2012.11.010.