研究課題/領域番号 |
25860202
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
丸山 敦史 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10431438)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘムオキシゲナーゼ / ノンコーディングRNA / Nrf2 / 酸化ストレス / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究の目的は、エンハンサー由来lncRNA によるNrf2 依存的HO-1 遺伝子発現増強機構の解明である。この目標を達成するために、以下の実験を行った。 1.ヒトHO-1 遺伝子エンハンサーから転写されるlncRNAs(eRNAs) の特徴づけ:①ヒトHO-1遺伝子の2つのエンハンサーから転写されるlncRNAsの5'末端をそれぞれ決定した。さらにE2エンハンサー由来のlncRNA(eRNAE2)については、イントロンを一つ含む約1.3kbの転写産物を同定した。②eRNAsがヒト由来細胞で発現が増強する事、およびNrf2活性化剤DEM, ヘミン、カドミウム、DMFにより増強する事を見出した。③マイクロアレイ解析により、eRNAE2がHO-1遺伝子発現増強を選択的に制御することがわかった。 2.eRNAE2のHO-1遺伝子発現増強における役割:eRNAE2のHO-1遺伝子発現増強における役割を検討するため、eRNAE2をsiRNAを用いてノックダウンした際のNrf2および転写装置Pol IIのHO-1遺伝子領域への結合を解析した。その結果、Nrf2は対照siRNA処理細胞と同様に、eRNAE2ノックダウン細胞でもHO-1エンハンサーへの結合がDEMにより増強した。一方、eRNAE2ノックダウン細胞では、Pol IIの結合増強が見られなくなった。そのためeRNAE2はPol IIのプロモーター結合に関与することがわかった。 3.Nrf2 依存的ヒトHO-1 遺伝子発現増強におけるHO-1 ゲノム領域のヒストン翻訳後修飾変化の解析:HO-1遺伝子領域におけるヒストンH3, H4のアセチル化を検討した。その結果、Nrf2活性化剤スルフォラフェンで細胞を刺激すると、HO-1遺伝子のエンハンサー領域とプロモーター領域のH4アセチル化が増強することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・ヒトHO-1遺伝子エンハンサーから産生されるlncRNAs(eRNAs)の5’末端を同定し、発現挙動を明らかにすることができた。 ・eRNAsの発現がNrf2およびBach1により制御されることを明らかにした。 ・eRNAE2が、HO-1遺伝子発現を選択的に制御することを解明し、そのメカニズムとしてeRNAE2が転写装置RNA Pol IIのHO-1遺伝子プロモーターに関与することを明らかにできた。 ・HO-1遺伝子発現増強の際、プロモーター領域とエンハンサー領域のヒストンH4アセチル化が増強することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
・これまでに得られた結果を学術原著論文として投稿準備中である。 ・前年度に引き続き、エンハンサー由来lncRNAs(eRNAs) によるNrf2 依存的HO-1 遺伝子発現増強機構の解明を目指す。本目的を達成するために以下の研究を実施する予定である。 1)eRNAsの全長を決定するために、ノザン解析を実施する。全長決定後、eRNAsに結合するタンパク質群の取得を試みる。 2)ヒトHO-1遺伝子領域で起こるエピジェネティック変化を検出するために、ヒストンメチル化を検出する抗体を用いてChIP解析を行う。さらに、HO-1遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化の変化を検出するために、MBPを用いたメチル化DNA濃縮を行う。 3)eRNA E2のストレス条件下での生理的貢献を探るために、CRISPER/Cas9システムを用いてeRNA E2欠損細胞を構築している。樹立した細胞を用いて、HO-1遺伝子発現やヘム代謝、鉄代謝および酸化ストレスへの影響を検討する予定である。
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