本研究は、生体に必須なヘムが転写抑制因子Bach2を標的とするシグナル分子として作用し、自然免疫応答を制御する機構を解明することを目指す。具体的には、「ヘムによる免疫応答制御」の概念を、ヘム異化と鉄の再利用において重要なマクロファージ細胞で展開し、ヘムがBach2のリガンドとして自然免疫応答を調節することを明らかにすることを目的とした。 まず、申請者は、ヘム関連遺伝子と自然免疫の関係を調べるために、野生型マウスとBach2ノックアウトマウスよりそれぞれ採取した赤脾髄マクロファージに対して、DNAマイクロアレイを行い、両者の遺伝子発現変化について比較検討した。その結果、赤脾髄マクロファージにおいては、全体的は遺伝子発現変化が野生型とBach2ノックアウトの間で大きな変化がないことが明らかとなった。Bach2による遺伝子発現制御は、赤脾髄マクロファージにおいて大きく影響していないことが考えられた。そこで、申請者はBach2遺伝子の発現量がRFP傾向の発現としてモニターできるRFPマウスを用いて、骨髄マクロファージにおけるBach2の発現を検討した。その結果、骨髄に存在するマクロファージには、Bach2が発現している細胞とBach2が発現していない細胞といった2つの集団が存在することが明らかとなった。そこで、この2つの集団をFACSにて分収しDNAマイクロアレイを行った。GO解析の結果、Bach2が発現している細胞において、ヘムー鉄代謝関連遺伝子を制御していることを示す解析結果がえられた。このことから、ヘムの異化を担う骨髄マクロファージにおいて、Bach2がヘムの輸送、分解および分解産物の処理といった一連の過程を統合的に制御している可能性がある。
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