研究課題
マクロファージにおけるMafBの機能は不明な点が多いことから、申請者はMafBの機能を網羅的に調べるため、発現マイクロアレイ解析を行い、C1qa遺伝子がMafb欠損マクロファージで減少していることを見いだした。補体C1qは、死細胞認識因子および老化促進物質として知られているが、その転写制御機構は不明である。そこで、平成26年度の研究では、1.生体内におけるMafBの機能解析として、自己免疫疾患モデルの誘導実験を行った。Mafb欠損マウスは、生後間もなく死亡する。そのため成体でのMafBの機能を調べるために、胎児肝細胞をX線照射したマウスへ移植し、血液が完全に置き換わったものを以後の実験に使用する。移植後1年程度経過したMafb欠損マウスの血清中の抗核抗体、抗dsDNA抗体価をELISAおよび、ELISAによって測定したところ、野生型に比べて有意に自己抗体が増加していることが明らかとなった。また、腎臓の組織切片HE染色、PAS染色の結果、糸球体腎炎が起きていることが確認された2.MafBによるC1q遺伝子群の制御機構の解析MafB欠損マウスの血清中のC1qの活性を調べるため、Hemolysis assayを行った。その結果、MafB欠損マウスの血清中にはC1qが顕著に減少していることが分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
血液を再構築させたMafb移植マウスは当初の仮説のとおり、自己抗体が増え、腎臓への抗体の沈着が見られさらに、糸球体腎炎も観察された。また、血清中のC1qも減少しており、これらの結果は、MafBがC1qを介して自己免疫疾患に重要であるというだけでなく、補体の古典経路にも重要であることが明らかとなった。
これまでの結果では、MafBがC1qの制御を介して、マクロファージのアポトーシス貪食についての結果を示してきたが、今後はさらにMafBが何によって制御されているのか詳細に明らかにする。とくに、PPARδなどの転写因子の制御下にC1qがあることが報告されており、MafBとPPARδの関係をあきらかにする。また、加齢したMafBノックアウトマウスの解析を行い、C1qの発現が各臓器で減少しているのか検討する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件)
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