研究課題/領域番号 |
25860207
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
後藤 栄治 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (40435649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NF-κB / ユビキチン |
研究概要 |
NF-κBはストレスや紫外線、サイトカイン等様々な刺激により活性化し、免疫応答、細胞増殖及び炎症等、生命に必須のシグナルを伝達する転写因子である。NF-κB 活性制御機構の破綻は、癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患など様々な疾患の原因となり、このような疾患では多くの場合NF-κBの恒常的な活性亢進が認められることから、近年、NF-κBの活性阻害が疾患の創薬ターゲットとして注目されている。従って、NF-κB活性制御機構の解明は、癌をはじめとする様々な疾患の原因解明及び創薬ターゲットに向け、極めて重要な意味を持つと考える。 申請者は、NF-κBの活性制御に関わる新規調節分子を同定するため、腫瘍壊死因子TNFαによるNF-κBの活性化に伴い、mRNAの発現が変動する分子をマイクロアレイ法にて網羅的に探索した。その結果、MARCHファミリータンパク質の一つであるE3ユビキチンリガーゼMARCH9を同定し、MARCH9はNF-κBの活性化を抑制する分子である可能性を見出した。現在までに以下の結果を得た。①培養細胞において、腫瘍壊死因子TNFα刺激により、MARCH9のmRNAの発現が減少した。 ②野生型MARCH9の過剰発現はTNFα刺激によるNF-κBの活性化を抑制するが、E3リガーゼ活性を持たない変異体MARCH9では、この抑制効果が減弱した。これらの結果から、MARCH9はNF-κBの活性化を抑制するE3ユビキチンリガーゼである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、NF-κBの活性化を抑制する膜結合型E3ユビキチンリガーゼの存在は知られていない。これまでの研究結果により、NF-κBの活性化刺激に伴い、MARCH9のmRNAの発現が減少することから、MARCH9は定常状態においてNF-κBの活性を負に制御し、過剰なシグナルが伝達されるのを抑制していることが予想される。したがって、申請者が見出しつつある“MARCH9によるNF-κB抑制機構”は、NF-κB活性化経路において、ユビキチン化による新たな負の制御が存在することを示唆する新たな知見であり、評価できると思われる。今後さらに詳細なメカニズムの解明を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
MARCH9によるNF-κB抑制の分子メカニズムおよび、生理的意義を解明するため、(I)生化学的、分子生物学的手法を用いた分子機序の解析、(II) MARCH9欠損マウスを用いた生理的意義の解析を行う。(I)の分子機序の解析では、NF-κBの抑制に関わるMARCH9の標的分子の同定が最も重要なポイントであるため、様々な対策を考慮しながら標的分子の同定を目指す。(II)の生理的意義の解析では、MARCH9の欠損が炎症性サイトカインの産生および、炎症性刺激に対する感受性(死亡率)に及ぼす影響や自然免疫を惹起する病原体認識パターンに対する応答等について解析し、抗炎症や免疫制御機構との関連を検討する。
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