NF-κBはストレスや紫外線、サイトカイン等様々な刺激により活性化し、免疫応答、細胞増殖及び炎症等、生命に必須のシグナルを伝達する転写因子である。NF-κB 活性制御機構の破綻は、癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患など様々な疾患の原因となり、このような疾患では多くの場合NF-κBの恒常的な活性亢進が認められることから、近年、NF-κBの活性阻害が疾患の創薬ターゲットとして注目されている。従って、NF-κB活性制御機構の解明は、癌をはじめとする様々な疾患の原因解明及び創薬ターゲットに向け、極めて重要な意味を持つと考える。我々はNF-κBの活性制御に関わる新規調節分子を同定するため、腫瘍壊死因子TNFαによるNF-κBの活性化に伴い、mRNAの発現が変動する分子をマイクロアレイ法にて網羅的に探索した。その結果、MARCHファミリータンパク質の一つであるE3ユビキチンリガーゼMARCH9を同定し、MARCH9はNF-κBの活性化を抑制する分子である可能性を見出した。これまでに得られている結果を以下に示す。①培養細胞において、腫瘍壊死因子TNFα刺激により、MARCH9のmRNAの発現が減少した。②野生型MARCH9の過剰発現はTNFα刺激によるNF-κBの活性化を抑制するが、E3リガーゼ活性を持たない変異体MARCH9では、この抑制効果が減弱した。NF-κBの活性化刺激に伴い、MARCH9のmRNAの発現が減少することから、MARCH9は定常状態においてNF-κBの活性を負に制御し、過剰なシグナルが伝達されるのを抑制する新規negative regulatorの可能性が考えられた。
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