研究課題/領域番号 |
25860208
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松永 耕一 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20570162)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | インスリン分泌 / 膵β細胞 / Rab GTPase |
研究概要 |
インスリンは、膵β細胞内において小胞体で合成、その後ゴルジ体で完成され、分泌顆粒に内包される。その後顆粒内で多量体を形成し、成熟したインスリンになり、細胞内に貯留される(成熟過程)。そして血中のグルコース濃度に応じて、細胞膜へ輸送、開口放出される(分泌過程)。そして古く残ったインスリン顆粒の一部はエンドソーム-リソソーム系を介して分解されると言われている(分解過程)。このように合成されたインスリン顆粒は細胞内の物流システム(細胞内ロジスティクス)によってその生産(合成と成熟過程)から在庫管理(細胞内貯留)と流通量(分泌過程)、品質管理、廃棄(分解過程)が厳密に制御されているが、その分子メカニズムについては未解明な部分が多い。 代表者はインスリン分泌に機能するRab27aの網羅的結合タンパク質の探索を行い、その中で複数のRab GTPaseを含んだ複合体に着目した。この新規複合体の生化学的、細胞生物学的解析を行ったところ、インスリン顆粒の成熟過程と分泌過程において重要な役割を持つことが明らかになりつつある。また、インスリン分泌過程が阻害されているノックアウトマウスの膵β細胞を調べたところ、恒常的にオートファジーが亢進していることが明らかになり、顆粒の品質管理にオートファジーが関係していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
代表者は平成25年度のインスリン顆粒の成熟と分泌についての研究計画①ー②、及びインスリン顆粒の品質管理機構についての研究計画①について研究を遂行した。まず顆粒の成熟と分泌についての解析については、新たに発見したRab27a複合体のリン酸化による制御を調べ、PKCの関与を示唆するデータを得た。さらに複合体の構成成分すべてに対して、アデノウイルスを利用したshRNAの導入によるノックダウンを行い、グルコース刺激に対する分泌能を調べたところ、構成成分それぞれのノックダウンでインスリン分泌が著しく阻害されることを見出した。さらにこの複合体は共通成分を持った二つの異なる複合体を形成し、一方の構成成分のノックダウンは、刺激による分泌のみを阻害し、しかしながらもう一方の構成成分のノックダウンは分泌機構の阻害だけでなく、インスリンの総量も著しく減少することがわかった。次に顆粒の品質管理機構については、インスリン分泌が阻害されるノックアウトマウスから単離したβ細胞では、オートファジーが恒常的に亢進していることが、各種アッセイ法により明らかになり、顆粒の品質管理にオートファジーが関与している可能性を強く示唆する結果となった。以上により、本研究課題は当初の計画以上に様々なことが明らかになり、予定よりも進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
インスリン顆粒の成熟と分泌機構については、同定された新規Rab27a結合たんぱく質の中でさらに着目している複合体に関わりのありそうな分子について解析を行う。例えば新規のRab不活性化たんぱく質(Rab-GAP)の可能性のあるたんぱく質が同定されているので、それを調べる。さらに新規複合体の生理的な役割を調べるために、複合体構成たんぱく質の機能欠失変異体及びリン酸化部位変異体を、膵β細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成して、インスリン分泌能や、生体における血糖値等を調べる。インスリン顆粒の品質管理機構については、オートファジーの誘導メカニズムや、インスリン顆粒を実際に積極的に分解しているのかどうかを調べ、その分子機構の詳細を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題に使用する消耗品や試薬類と同様のものが、研究室内に在庫として若干残っており、使用期限日の早いそれらを使用した。しかしながら次年度において購入予定の試薬類は計画通り必要になると思われるので、次年度に前年度分の計画通りの購入を行う予定である。またマウス等の購入、維持費は次年度に見送った。 主に細胞培養器具や培地、試薬類の消耗品が主な研究の使途になる。平成26年度へ繰り越す金額が生じたが、これは前年度に予定していた、使用期限のある試薬等の購入を次年度に見送ったためである。in vivo実験のためのマウス購入、維持のための費用は次年度に使用する。さらにこれまでに得られたデータ等と国内外に発表するための旅費や、論文投稿等の費用にも使用する。
|