研究概要 |
培養精子幹細胞であるGS細胞ではMyc遺伝子のうちc-mycとN-mycが高く発現している。自己複製因子GDNF, FGF2はどちらもc-mycのmRNA発現を誘導することが分かった。これに対してN-mycのmRNA発現は自己複製因子による制御を受けなかった。さらにタンパク質発現制御について調べると、GDNF, FGF2はどちらもc-MYC, N-MYCタンパク質の発現を誘導することが示された。サイトカイン刺激から計時的な変化を調べると、MYCタンパク質はどちらもサイトカイン刺激後増加し、すぐに減少することが分かった。以上のことから、GS細胞ではc-myc, N-myc遺伝子がそれぞれ異なることが分かった。 さらにリン酸化酵素シグナル経路AktやMek, p38などの選択的阻害剤をGS細胞に導入し、定量RT-PCRを行ってMyc遺伝子の発現制御機構を調べた。これまでにc-mycの発現を制御するシグナルは見出されなかった。c-myc遺伝子mRNAがGDNF, FGF2に制御されることを考えると、下流のシグナルで制御されないことは意外であった。複数のシグナル経路で発現が制御されている可能性がある。これに対してN-mycはp38, MEK5シグナルの制御を受けることが分かった。 さらにGS細胞におけるMyc遺伝子の機能を調べるためにMyc遺伝子コンディショナルGS細胞を樹立し、Myc遺伝子欠損GS細胞の増殖を調べた。c-mycの欠損はGS細胞の増殖に影響しないが、N-myc欠損あるいはc-myc/N-myc同時欠損ではGS細胞の増殖が有意に低下した。Myc遺伝子欠損GS細胞と野生型GS細胞のmRNA発現を定量的PCRで比較すると細胞周期関連遺伝子の発現低下が見られることが分かり、Myc遺伝子がGS細胞において細胞周期遺伝子を制御していることが示唆された。
|