研究課題/領域番号 |
25860211
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 真司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (20572324)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 上皮分岐管腔形成 / Wnt / EGF / Arl4c |
研究概要 |
平成25年度はWnt3aとEGFシグナルの協調による三次元基質中での細胞形態制御の分子機構に関する解析を行い、以下の研究成果を得ている。①Wnt3aとEGF(Wnt3a/EGF)の同時刺激による三次元基質内分岐管腔形成および上皮細胞伸長にともなって発現上昇する遺伝子をDNAマイクロアレイ法を用いて網羅的に探索し、Arl4c (ADP-ribosylation factor-like 4c)を同定した。Arl4cはArfファミリーに属する低分子量G蛋白質であるが、上皮形態形成における役割は不明である。正常ラット腸管上皮細胞(IEC6細胞)においてArl4cをsiRNAを用いて発現抑制したところ、Wnt3a/EGF依存的な分岐管腔形成と上皮細胞伸長が抑制された。また、Arl4cの安定発現株を樹立したところ、EGF存在下での分岐管腔形成と上皮細胞伸長が誘導された。②Wnt3a/EGF-Arl4cシグナルが上皮細胞伸長を誘導する分子機構を明らかにした。免疫染色にて、Wnt3a/EGFシグナルによって伸長した上皮細胞は伸長先端仮足部でミオシン軽鎖(MLC2)リン酸化が減弱していた。そこで上流のRhoシグナルの活性をプルダウン法で検討したところ、Wnt3a/EGF-Arl4cシグナルの活性化によってRhoシグナルの活性が抑制された。さらに、Wnt3a/EGF-Arl4cシグナルは下流で細胞骨格制御因子であるArf6-Rac系を活性化し、Racの活性化がRhoシグナルの抑制を誘導することが示唆された。細胞をRhoキナーゼの阻害剤Y27632で処理したところ、EGF存在下で上皮細胞に対してWnt3a/EGFと類似の分岐管腔形成と上皮伸長を誘導したことから、Wnt3a/EGFシグナルによるArl4cを介したRhoシグナルの活性調節が三次元上皮分岐管腔形成に重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Wnt3a/EGFシグナルによって発現誘導され、三次元基質内での上皮細胞の分岐管腔形成を制御する標的遺伝子としてArl4cを同定した。さらに、Wnt3a/EGF-Arl4c経路が細胞骨格制御因子であるRacとRhoの活性を調節することで上皮細胞の形態と分岐管腔形成を制御する新規の形態形成機構が明らかになった。これらの結果をもとに、平成26年度の細胞骨格・形態変化から増殖活性化にいたるプロセスの解析をすでに開始できているため。
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今後の研究の推進方策 |
三次元基質内での分岐管腔形成過程では形態形成にともなって細胞増殖が活性化する。最終年度は、平成25年度に明らかにしたWnt3a/EGF-Arl4c経路による細胞骨格と形態の変化が細胞増殖を活性化する新たなシグナル経路を解明する。すでに管腔形成の先端部付近の細胞が伸長形態変化し、形態変化した細胞において細胞増殖制御因子であるYAP/TAZが特異的に核内へと移行することを見出している。そこで、Wnt3a/EGF-Arl4c経路による細胞骨格と細胞形態の変化とYAP/TAZの局在の関係を明らかにする。さらに、YAP/TAZの発現抑制や恒常的に核内に局在する活性化変異体(YAP5SA)が三次元基質内での上皮分岐管腔形成に与える影響を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度および平成26年度の2年間での研究を計画しており、現在までのところ平成25年度の研究は順調に進捗している。最終年度(平成26年度)にも当初の予定通り、上皮細胞形態が三次元基質内での細胞増殖を制御する機構に関する研究を遂行するため。 物品費として一般試薬、培養用試薬・器具、ガラス器具等を購入するために1,076,000(円)、旅費として124,000(円)、その他と論文別刷、論文投稿費用で100,000(円)で計1,300,000(円)を使用する予定である。
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