研究課題
上皮細胞形態が増殖を制御する分子機構の解析を行い、以下の研究成果を得ている。①ラット腸管上皮細胞株IEC6において、Wnt3aとEGFシグナルの同時活性化(Wnt3a/EGF)で発現が誘導され、上皮形態を制御する遺伝子としてArl4c (ADP-ribosylation factor-like 4c)を同定した。Arl4cの発現は三次元基質中でのWnt3a/EGF依存的な管腔形成にともなう細胞増殖に必要であった。管腔形成にともない、シスト構造から上皮細胞が周囲の基質中へと伸展・移動する際、伸長変化した細胞において細胞増殖活性化因子YAP/TAZが核内へと移行し、局所的な細胞増殖を誘導した。Arl4cはWnt3a/EGF依存的な上皮細胞の伸長変化と、YAP/TAZの核移行に必要であることが明らかになった。Arl4cの発現は細胞骨格制御因子であるRacの活性化とRhoの抑制を介して上皮細胞の伸長を誘導するが、阻害剤を用いたRhoシグナルの適切な抑制は、Arl4cを発現した場合と同様に上皮細胞の伸長とYAP/TAZの核移行を引き起こし、管腔形成が誘導された。これらの結果からArl4cによるRhoの抑制を介した上皮形態の制御がYAP/TAZを介して細胞増殖を活性化する新規の機構が明らかになった。②免疫組織学的解析から器官形成期のマウス胎児において、Arl4cは腎臓原基の尿管芽先端部に強く発現していた。Arl4cの発現は尿管芽において、WntとFGFシグナルに依存していた。周囲の間葉組織を除去した尿管芽上皮をマトリゲル内でGDNF・FGF1・R-spondin存在下で器官培養し、管腔構造の形成を誘導する培養方法を確立した。Arl4cの発現抑制は尿管芽上皮の管腔形成を抑制したことから、胎生期の腎臓尿管芽の管腔形成にもWnt/増殖因子-Arl4cシグナルが関与することが明らかになった。
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http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molbiobc/
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