研究課題
若手研究(B)
これまでの研究により、腺房細胞においてPdx-1過剰発現下でIsl-1を導入発現させると、再生の場であるtubular complexが広範囲に出現することや、腺房細胞特異的にPdx-1を発現制御できる成体マウスにおいて、Pdx-1を長期に発現させ、lineage tracingを行うと膵島内に腺房細胞由来のインスリン陽性細胞が出現することが分かってきた。本研究では、腺房細胞特異的にPdx-1/Isl-1を共に発現制御できるマウスをもちいて、遺伝子発現の変化を検討し、また、Pdx-1/Isl-1を過剰発現させた腺房細胞をin vitroで培養し、腺房細胞からインスリン産生細胞へのリプログラミングを試みることを目的としている。本年度は、経時的に摘出したElastase-Cre/Pdx-1/Isl-1マウスの膵組織から切片を作製し、14種類の膵関連抗体を組み合わせて免疫染色を行ってきた。その結果、Pdx-1を単独で発現させるよりも2週間程度早く膵島内に腺房細胞由来インスリン陽性細胞が出現することが観察された。また、Pdx-1単独では確認できなかった腺房細胞由来グルカゴン陽性細胞も出現している可能性があった。一方、in vitro分化転換誘導実験においては、Pdx-1/Isl-1過剰発現だけでは十分ではない可能性があるため、膵再生に有効と考えられる遺伝子(MafAやNgn3など)も組み合わせて導入する予定である。本年度は、予備実験において最も感染効率の高かったレンチウイルスの系をもちいるため、各遺伝子をクローニングし、レンチウイルスベクターに組み込んだ。初期化を起こすレンチウイルスベクターも作製しており、来年度は初期化と分化転換を組み合わせたより効率の良い誘導法を構築する予定である。
2: おおむね順調に進展している
動物実験施設からの依頼により、マウスノロウイルス駆除のため、マウスのクリーンアップ作業を行った。そのため、ホモノックインマウスが一旦すべてヘテロノックインマウスになり、Elastase-Cre/Pdx-1/Isl-1マウスの作製の効率が低下した。しかしながら、実験に必要な匹数は少なくて済むため、大きな影響にはなっていない。
マウスのクリーンアップも終了し、順調に研究が進むと考えている。1)Elastase-Cre/Pdx-1/Isl-1マウスをより効率良く作製するために、Pdx-1とIsl-1を発現制御できるカセットを持ったマウスを各々ホモ化する。2)膵島内に出現した腺房細胞由来細胞の性質を、膵特異的抗体の組み合わせを工夫して免疫染色を行うことにより、より詳細に検討する。3)acino-ductal分化転換が起こり始める時期から経時的に腺房細胞を単離し、遺伝子発現の変化をreal-time PCRにて解析する。遺伝子発現に大きな変化が見られる時期が特定できたら、total RNAをもちいてDNAマイクロアレイを行う。4)in vitro分化転換誘導実験においては、Elastase-Cre/Pdx-1/Isl-1マウスの単離腺房細胞にレンチウイルスベクターをもちいて膵再生・発生関連遺伝子を導入する。Pdx-1/Isl-1過剰発現による変化が起こる前後で腺房細胞を単離培養し、どちらの条件において分化転換が起こりやすいか検討した後、培養条件も含め、分化転換が起こりやすい条件をより詳細に検討していく。さらに、初期化を起こすレンチウイルスベクターをもちいて、より効率の良い誘導法の構築を目指す。
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PLoS One
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Elife
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