研究課題
若手研究(B)
パーキンソン病原因遺伝子産物であるPINK1を介した損傷ミトコンドリア分解機構について解析を行った。PINK1の結合タンパク質として新規に見出したSARM1、TRAF6によってPINK1はLys63鎖型のユビキチン化を受け、このユビキチン化はPINK1の安定化に必要であった。ミトコンドリアの膜電位が低下した際、PINK1のユビキチン化が促進され、損傷ミトコンドリアの分解(マイトファジー)が誘導された。PINK1のユビキチン化の阻害によってマイトファジーは抑制され、家族性パーキンソン病に関わる遺伝子変異をもつPINK1変異体ではSARM1、TRAF6との結合及びユビキチン化が減少していた。これらの結果から、PINK1のSARM1、TRAF6との結合及びLys63鎖型ユビキチン化の減少が、不要ミトコンドリアの分解不全やパーキンソン病の発症・進展につながることが示唆された。ミトコンドリアに対するストレス刺激下でのPINK1の発現制御について解析を行った。PINK1は損傷ミトコンドリアの分解センサーとして働くことから、常に一定量のPINK1がミトコンドリアに存在することが必要であると考えられる。ミトコンドリア脱分極剤を用いてミトコンドリア分解を誘導すると、PINK1の発現誘導が起こった。PINK1プロモーターの解析から、配列上に転写因子Xの結合サイトがあることを見出した。脱分極を含む様々なストレスによってミトコンドリアから活性酸素種(ROS)が産生され、ROSはPINK1の発現誘導に必要であった。ROSの抑制やX不活性化因子の強制発現によってPINK1の発現は抑制された。これらの結果から、ミトコンドリアに損害が生じた際に転写因子Xが活性化されミトコンドリアにPINK1を補うメカニズムの存在が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
PINK1のユビキチン化を介した損傷ミトコンドリアの分解機構について解明し、Molecular Biology of the Cell誌に掲載された。マイトファジーによってミトコンドリアが分解された時に、PINK1をミトコンドリアに補う機構として転写因子Xを介した転写制御について解析を行った。論文は現在投稿中である。PINK1を中心としたミトコンドリア恒常性維持機構について、申請書に記載した損傷ミトコンドリアの分解とミトコンドリア新生に関わる一部のメカニズムについて解明することができた。今後はミトコンドリアの定常状態の維持と新生に関わるメカニズムについて更に研究を進めていく。
PINK1を介した損傷ミトコンドリアの分解誘導機構は明らかになりつつあるので、今後はPINK1を介したミトコンドリア定常状態の維持・新生に関して研究を進める。現在、健常ミトコンドリアでPINK1を不活性化すると考えている因子Yについて研究を行っている。これまでの研究でYとPINK1はミトコンドリアに損傷を与える刺激を加えた時に解離することを確かめているので、これを基に研究を進める。マイトファジーによって失われたミトコンドリアを新たに補充するメカニズムについては、ミトコンドリア分解誘導時に活性化することを確かめた転写因子Xに関して研究を進め、ミトコンドリア新生に関わる因子の発現とミトコンドリアの量的変化を解析していく。
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Molecular Biotechnology
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Molecular Biology of the Cell
巻: 24 (18) ページ: 2772-2784
10.1091/mbc.E13-01-0016