病原微生物などが体内に侵入すると、マクロファージなど食細胞がこれに対処する。この反応はファゴサイトーシスと呼ばれ、ファゴソームの形成と成熟から成る。これまでに、SNAREタンパクであるSNAP-23がこれら両過程に機能することを報告したが、制御機構は不明である。そこで本研究は、ファゴサイトーシスにおけるSNAP-23の制御機構解明を目的とした。 はじめに、①野生型SNAP-23に対し、95番目のセリン残基をアラニン残基(非リン酸化型)やアスパラギン酸残基(疑似リン酸化型)に置換した変異体を発現するマクロファージ細胞株を樹立した。②この細胞株を用いてファゴソーム形成・成熟を解析したところ、Ser95のリン酸化により両過程が阻害された。この阻害はSNAP-23の構造変化に因ると考えられたため、SNAP-23の分子内FRETプローブを用いて構造変化について調べた。その結果、③SNAP-23はSer95のリン酸化により立体構造が変化することがわかった。 次にこの部位のリン酸化酵素同定のため、SNAP-23のリン酸化酵素として報告のあるIKK2について検討した。④FRETプローブとIKK2を共発現させたマクロファージでは、ファゴソーム膜上SNAP-23の構造が変化していた。また、⑤IKK2を過剰発現した場合はファゴソーム成熟化効率が低下した。 インターフェロンγ(IFN-γ)刺激したマクロファージでは、ファゴソーム成熟化が抑制されることが知られている。そこで、⑥IFN-γ刺激時のファゴソーム膜上SNAP-23の構造について調べたところ、Ser95依存的な構造変化が見られた。 以上から、SNAP-23はSer95のリン酸化により立体構造が変化し、ファゴソーム形成・成熟が阻害されること、また、IKK2がファゴソーム膜上SNAP-23のリン酸化酵素の一つとして関与することが明らかとなった。
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