研究課題/領域番号 |
25860223
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
古賀 友紹 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30615092)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生理活性脂質 / GPCR / 脂質免疫学 / 樹状細胞 / T細胞 |
研究概要 |
生理活性脂質ロイコトリエンB4の高親和性受容体であるBLT1の樹状細胞における役割には不明な点が多い。申請者はこれまでに、独自に樹立した抗BLT1単クローン抗体を用いて、樹状細胞にBLT1発現量の異なるサブセット(BLT1hi、BLT1lo DC) が存在することを見いだした。本研究では、BLT1の発現量の違いにより規定される新規樹状細胞サブセットの免疫応答における役割を明らかにすることを目的とし研究を行っている。 DNAマイクロアレイを用いて、BLT1hiとBLT1lo樹状細胞におけるサイトカイン分泌能とT細胞分化誘導能の違いを生み出す原因遺伝子を調べた。その結果、Th1分化を誘導することが知られているIL-12p35,IL-36α,IL-36γといった遺伝子やTh2分化を誘導する事が知られるIL-10遺伝子がBLT1hi樹状細胞において高く発現していることがわかった。IL-12p35と IL-10においてはタンパク質レベルでもBLT1hi樹状細胞において高い発現を認めた。そこでIL-12の中和抗体を用いたところ、BLT1hi樹状細胞によるTh1分化誘導が抑制された。また、BLT1hi樹状細胞と比べて、BLT1lo樹状細胞ではIL-2の分泌能が高いことが明らかとなった。樹状細胞から分泌されるIL-2は、T細胞が分化・増殖を始めるのに重要な因子である事が知られているため、両サブセットを用いてT細胞増殖に対する影響を調べた結果、BLT1lo樹状細胞はBLT1hi樹状細胞に比べて、2倍ほどのT細胞増殖誘導能を持つ事がわかった。これらの結果から、BLT1の発現で規定される両樹状細胞サブセットはT細胞の分化と増殖を分担して免疫応答の活性化に関わっていると考えられた。また、細胞特異的なBLT1ノックアウトマウスを作製する為に、キメラマウスを作製したところ、五匹得られ、そのうち一匹はその遺伝型を仔に伝える事が出来た。現在、CAG-FLPeマウスと交配している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAマイクロアレイを用いた解析より、当初わかっていなかったBLT1hi樹状細胞によるTh1、Th2分化誘導のメカニズムがおおよそわかってきたこと、また、キメラマウスのもつ標的遺伝子座がGermにのり、交配もうまく行っていること等により順調に進展していると判断している。一方で、MetaCoreを用いてパスウェイ解析を行い、サイトカイン誘導の違いを生み出すメカニズムもある程度予測できてきていることも1つの要因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これらの樹状細胞における異なるサイトカイン産生能の分子メカニズムの解明と、両サブセットのin vivoにおける機能解析を接触性皮膚炎等のモデルを用いて解析して行きたい。コンディショナルノックアウトマウスについては既に交配しているCAG-FLPeの系がうまく行き次第、CD11c-CREおよびLck-CREマウスと交配し、樹状細胞特異的ノックアウト、T細胞特異的ノックアウトマウスを作製する。なお、それらのマウスは既に入手確約済みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
ノックアウトマウスの作製に少し時間がかかったため、計上していた費用ほど増えなかった。また、消耗品等も節約して使用する事を徹底していたため、少し余剰費用を残す事が出来た。 これから増えると考えられるコンディショナルノックアウトマウスの維持・管理費と研究成果を報告するために行く、国際学会の参加・渡航費用に当てる予定である。
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