我々は、プリオンタンパク質が引き起こすミトコンドリア凝集に関わる因子として、14-3-3ζが関与することを明らかにしていた。本年度は、14-3-3ζ以外の因子群の探索を行った。まずζ以外の14-3-3アイソフォームの関与を検討した。神経芽細胞腫由来N2a細胞に14-3-3β、γ、ε、η、θのsiRNAをトランスフェクションし、その後EGFP-PrP1-139を発現させた。蛍光顕微鏡でミトコンドリア凝集を観察した結果、14-3-3γとηをノックダウンした時は、ミトコンドリア凝集が観察されなかった。また14-3-3γとηをノックダウンした時は、EGFP-PrP1-139のミトコンドリアへの局在が阻害されていた。14-3-3γとηはプリオンタンパク質のミトコンドリア輸入に関与し、ミトコンドリアを凝集させることがわかった。我々はさらに、プリオンタンパク質のミトコンドリア輸入とミトコンドリア凝集について解析を進めた。ミトコンドリアタンパク質の輸入には、ミトコンドリア外膜に存在するTom複合体が関与している。そこで、プリオンタンパク質の輸入にはTom複合体が関与するか検討を行った。Tom複合体を構成する成分のうち、受容体として機能するTom20、22、70と、膜透過装置に機能するTom40のsiRNAをN2a細胞にトランスフェクションし、EGFP-PrP1-139を発現させた。蛍光顕微鏡でEGFP-PrP1-139のミトコンドリア局在とミトコンドリア凝集を観察した結果、Tom70のsiRNAをトランスフェクションしたときのみ、EGFP-PrP1-139のミトコンドリア局在は阻害され、さらにミトコンドリア凝集が阻害されていた。14-3-3γ、ηおよびTom70、これら因子群によりプリオンタンパク質はミトコンドリアへ輸入され、ミトコンドリア凝集を引き起こすことがわかった。
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