研究課題/領域番号 |
25860228
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
高橋 大 山形大学, 医学部, 助教 (90400548)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 活性酸素種 / 心筋障害 / ユビキチン転移酵素Itch / アポトーシス |
研究概要 |
活性酸素種(ROS)の増加が関与する心疾患の発生機序を証明するために、ユビキチン・プロテアソームシステムを構成するユビキチン転移酵素Itchと、細胞内のROSの調節系であるThioredoxin systemを構成するタンパクのThioredoxin-interacting protein(TXNIP)に着目してin vitroおよびin vivoで検討した。ROS刺激(ドキソルビシンとH2O2)により心筋細胞中のTXNIPの発現が低下するが、この低下にはItchを介したTXNIPに対するユビキチンの付加が関係しており、プロテアソーム阻害薬によってROS刺激によるTXNIPの発現低下は抑制された。そこで、Itchを過剰発現した心筋細胞にROS刺激を行ったところ、TXNIPの発現低下は抑制され、引き続いて起こるアポトーシスも抑制された。さらに、ROS刺激の際にsiRNAにてItchをknock downしたところ、アポトーシスがさらに亢進した。このことから、ItchはROS増加による心筋障害の発症に対して、TXNIPをタンパク分解することによりprotectiveに機能していることが示された。 これらのin vitroでの実験結果をもとに、Itchの機能をin vivoで解析するために、Itchを心筋特異的に発現させたマウス(Itch TGマウス)の作成に成功した。ドキソルビシンを腹腔内注射した心筋症モデル、および心筋梗塞を作成した心筋梗塞モデルを野生型マウスとItch TGマウスそれぞれに作成し、生存率を比較したところ、いずれの病態モデルにおいてもItch TGマウスが有意に生存率が良好であった。また、いずれの病態マウスでも心筋組織のアポトーシスが増加していたが、Itch TGマウスではそれらアポトーシスが抑制されており、心筋組織中のTXNIP発現が低下していた。 以上の結果から、ROSの増加が関与する心疾患の発生機序には、ItchとTXNIPの相互作用を介した心筋細胞のアポトーシスの調整が関わっていることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitro、in vivoともに当初の実験予定より進捗が良く、実験計画は順調に進行している。平成26年度は、細胞内の他のタンパク発現などにも着目し、よりROSの増加が関与する心疾患の発生機序を深く証明していくこととしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のようにin vitroの実験はほぼ終了しており、残すはTXNIP周辺の細胞内タンパクの発現の増減を確認し、さらに証明を深めていく。また、Itch TGマウスの作成についても終了しており、今後はエコーによる心機能の評価や、細胞内アポトーシスのマーカーである、caspase-3などの発現などについても実験を行い、内容を深めていく方針である。また、論文作成にも着手し、今年度中のpublishを目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
トランスジェニックマウスの作成が比較的順調にできたことにより、当初見込んでいた各種実験試薬などのコストが約50000円程度抑えられた。また、今年度は学会出張などの旅費(50000円)を請求していないことも次年度使用額が生じた理由である。 平成26年度は、現在のデータにさらに上乗せした内容で学会発表を予定しており、出張の際の旅費を請求する計画がある。また、in vivoの実験を遂行するためにも、トランスジェニックマウスの飼育費がかさんでくることが予想され、当初の予算に加えて費用に充てる計画である。
|