研究課題
高齢になるにつれて増加する糖尿病、神経変性疾患、ロコモティブシンドロームの原因となる骨格筋の減少(サルコペニア)、メタボリックシンドロームさらには老化過程そのものに慢性炎症が関わっていることが知られているが、慢性炎症がこのような変化を来す詳細なメカニズムは判っていない。近年、炎症により生成される一酸化窒素(NO)が、タンパク質を構成するアミノ酸の一つに結合(S-ニトロソ化)することにより、蛋白質の機能を変化させることが明らかにされた。今日ではS-ニトロソ化はリン酸化に匹敵する細胞内シグナル伝達機構として考えられている。今回、私たちは慢性炎症と加齢関連疾患を結ぶメカニズムを明らかにするために、長寿遺伝子として知られているサーチュイン1(SIRT1)S-ニトロソ化と加齢関連疾患との関係について詳しく解析を行った。今回の研究では、加齢により増加する糖尿病、サルコペニア、パーキンソン病のモデル動物と培養細胞を用い、炎症時における長寿遺伝子産物SIRT1のS-ニトロソ化と炎症、細胞死の関連について調べた。その結果、急性炎症および慢性炎症によってSIRT1の活性が弱くなり、炎症や細胞死を来しやすくなることを見出した。SIRT1のS-ニトロソ化を薬剤あるいは遺伝子操作によって減らすと、SIRT1の活性が戻り、炎症反応が部分的に抑えられることを明らかとした。また、網羅的検出法を用いて同定した新規S-ニトロソ化タンパク質は、FLAGタグ等をつけた発現ベクターを作成し、NOを作用させた際にS-ニトロソ化が起こることを確認する予定である。iNOS-KO;ob/obマウスにおいては当初予想と異なり、インスリン抵抗性の改善が体重増加を引き起こしたため、詳細な検討を行っている。脂肪組織特異的GSNOR発現マウスは4系統の樹立に成功した。発現量の多い系統のみを繁殖し、解析に用いる予定である。
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Science Signaling
巻: 351 ページ: ra106
10.1126/scisignal.2005375.
www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20141112.pdf
http://www.tmd.ac.jp/grad/vasc/vasc-J.htm/