本研究はGSK3βのがん促進作用のメカニズムをがん固有の代謝特性に焦点を当てて検討した.大腸がん細胞で異常活性を示すGSK3βはピルビン酸脱水素酵素(PDH)を特異的にリン酸化してその活性を阻害することにより,がん促進的に作用する解糖系優位の代謝を誘導していると考えられた.GSK3β阻害により,がん細胞のエネルギー産生経路は解糖系から酸化的リン酸化にシフトし,アポトーシス刺激感受性になった.一方,これらの代謝変化は非腫瘍性細胞では認められなかった.したがって,GSK3β阻害によるがん治療効果はがん特有のエネルギー代謝を選択的に是正することによるものと考えられ,その安全性を示唆している.
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