内臓脂肪である腸間膜肪組織および鼠蹊部の皮下脂肪組織から間質-血管画分細胞を単離し,その分画の細胞に対して100種類以上の幹細胞関連表面抗原の発現をフローサイトメトリーにて半網羅的に検討した。次に有意に発現が確認された表面抗原に関して,その発現の有無で細胞をセルソーターによって分取,さらに培養を行った。そして分取・培養した細胞が前駆脂肪細胞であるかを判定するため,複数の方法で脂肪細胞へと分化誘導処理を施すことにより分化効率を検討した。分化効率の評価は,細胞内の油滴形成を検討した。生化学的指標として,当教室で同定した脂肪細胞特異的分泌蛋白質,アディポネクチンの培養上清濃度を測定した。その結果,前駆内臓脂肪細胞分画および前駆皮下脂肪細胞分画を同定することができた。各分画の細胞すべてが脂肪細胞に分化することを確認した。さらに,in vitroで得られる各前駆脂肪細胞由来成熟脂肪細胞がin vivoでの脂肪細胞の形質を維持していることも確認できた。 次に同定した各前駆脂肪細胞を継代培養するための方法を検討した。まず培養中の細胞に種々の添加物を加えることで継代培養が可能になるかを検討した。その結果,ある添加物存在下では分化効率をある程度維持できることを見出した。次に培養基面に加工を施し,前駆内臓脂肪細胞および前駆皮下脂肪細胞が継代可能になるかを検討した。その結果,前駆皮下脂肪細胞においては培養基面の加工の効果はそれほど見られなかった。一方,前駆内臓脂肪細胞においては加工された培養基面で培養することにより分化効率の上昇がみられた。 以上より,いくつかの培養方法を組み合わせることによって各前駆脂肪細胞の継代培養はある程度可能であることが分かった。
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