研究課題/領域番号 |
25860238
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神澤 範行 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (40452461)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペルオキシソーム病 / GPIアンカー / 脂質リモデリング |
研究概要 |
ペルオキシソームの形成障害や機能異常でペルオキシソーム病と総称される難病を発症する。ペルオキシソーム病の症状が発現する機構については不明な点が多く、有効な治療法もまだ開発されていない。これまでに健常人ではアルキルアシル型であるGPIアンカーの脂質部分が、ペルオキシソーム病患者ではジアシル型のみであることを報告した。これまでペルオキシソーム病患者はプラスマローゲンの欠損で諸症状が出ると考えられていたが、アルキルアシル型のGPIアンカーの欠損もまたその諸症状の原因の1つになっていると考えられた。 GPIアンカーはジアシル型のPIから生合成されるが、生合成の初期のステップにおいて、その脂質部分がジアシル型からアルキルアシル型に変換される。これまでに未知のホスファターゼをsiRNAでノックダウンすることによって、ジアシル型のGPIアンカーしか生合成できない遺伝子を見出し、この遺伝子をジアシル型のGPIアンカーをアルキルアシル型に変換する変換酵素「リモデレース」の候補とした。本研究課題では、このリモデレースの候補遺伝子を欠損させた細胞あるいは動物モデルを作出し、それらを解析することでアルキルアシル型GPIアンカーの生理学的意義を解明することを目的としている。生体内でのアルキルアシル型GPIアンカーの役割は明らかになっていないが、アルキルアシル型GPIアンカーの生理学的意義を解明することで、ペルオキシソーム病の病態理解と発症メカニズムの解明につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ジアシル型のGPIアンカーをアルキルアシル型に変換するリモデレースの候補遺伝子を見出した。今回、ヒト胎児腎由来のHEK293T細胞を用いて、CRISPR/Cas9のシステムでこの候補遺伝子を欠損するノックアウト細胞の作出に成功した。またGPIアンカーのリモデリングには、アルキル供与体となるアルキルアシル型リン脂質が必要であり、これまでの結果から推定されるアルキル供与体の生合成に関連する経路で作用する酵素をノックダウンすると、アルキルアシル型GPIアンカーを生合成できなかった。今後、リモデレース候補遺伝子のノックアウト細胞の諸性質を解明すると共にアルキル供与体を特定することで、ペルオキシソーム病の病態解明を目指す。これまでの全体的な達成度は概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、まず今回作出したノックアウト細胞を用いて、GPIアンカーの中間体および細胞膜上のGPIアンカー型タンパク質のPI部分を精密質量分析で分析し、ジアシル型のGPIアンカーしか生合成されてないことを確認する。ジアシル型しか検出されなければ、これまでにGPIアンカーの脂質部分の構造変換に関わる酵素は報告されておらず新規酵素となる。さらにノックアウト細胞でのシグナリングやGPIアンカー型タンパク質の局在を検討する。また個体レベルでのアルキルアシル型GPIアンカーの生理学的意義を解明するためにノックアウトマウスの作出に取り掛かり、ペルオキシソーム病の症状と同じフェノタイプが出た時は詳細に解析することで、アルキルアシル型GPIアンカーとペルオキシソーム病の病態理解と発症メカニズムの関連を明らかにする予定である。
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