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2013 年度 実施状況報告書

精神疾患に関わる脳特異的ノンコーディングRNAの機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 25860239
研究種目

若手研究(B)

研究機関広島大学

研究代表者

古米 亮平  広島大学, 医歯薬保健学研究院, 特任助教 (30450414)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードプラダーウィリー症候群 / ノンコーディングRNA / 次世代シークエンサー / マイクロRNA
研究概要

マウス脳由来の初期培養神経細胞において、プラダーウィリー症候群の原因とされる機能不明のノンコーディングRNAのノックダウンを行い、三回にわたって次世代シークエンサーを用いたRNAの比較実験を行った。その結果、以下に述べる三点について変化を見出すことに成功した。
第一に、膜イオン輸送体や免疫に関与する遺伝子群など、約1000個の遺伝子発現に変化があることが分かった。そのうち、いくつかの神経ペプチドのmRNAに関しては、ノンコーディングRNAのノックダウンによる変化の再現性を確認できた。
第二に、近年注目されている、mRNAの翻訳後修飾であるRNAエディティング(主にアデニンからグアニンの塩基置換)について調べたところ、ノンコーディングRNAのノックダウンによってRNAエディティング率に変化がある遺伝子をいくつか同定した。但し、RNAエディティング率の変化は非常に微妙であるため、RNAエディティングを直接測定するなどの確認が必要である。
第三に、上記サンプルから短いRNAだけを抽出することにより、次世代シークエンサーでヒトでは約1000種類存在すると言われているマイクロRNA (miRNA)群の変化を解析した。その結果、数種類のmiRNAの発現がノックダウンで変化していることを見出した。その中には十倍以上変化するものも含まれており、ノンコーディングRNAノックダウンによる変化のうち最も大きなものであった。
以上のように、プラダーウィリー症候群の原因とされる機能不明のノンコーディングRNAのノックダウンが、mRNAの発現、mRNAの修飾(RNAエディティング)、miRNAの発現と多様にRNA分子群に変化を及ぼすことが分かった。今後は、これらの変化のうちどの因子がプラダーウィリー症候群の病態に致命的であるかを探る目的で研究を続ける。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

プラダーウィリー症候群の原因とされるノンコーディングRNAのノックダウン効果について、RNAレベルにおいて以下の三点で変化を見い出した。mRNAの発現、mRNAの修飾(RNAエディティング)、miRNAの発現である。その中でも特にmiRNAの変化が著しく、ここに焦点を絞って標的探索する、という新しい目標設定ができた。見出された変化のうち、どの要素がプラダーウィリー症候群の病態を説明しうる決定的であるかの同定には全く至っていない。
また、プラダーウィリー症候群患者のiPS細胞は現在培養中であり、神経細胞に分化させている途中段階である。このiPS細胞の多能性については、マーカーの発現などから問題ないことを確認している。iPS細胞の純化および神経細胞分化については時間がかかることがあらかじめ分かっていたので順当であると考える。
以上の点で、達成度はやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

今後は、大きな変化があったmiRNA発現を中心に分子レベルの解析を進める。miRNAの検出には特殊なプライマーを設計しなければならないが、まず本当に候補miRNAの発現が変化しているのかをRT-qPCRで確認する必要がある。次に、プラダーウィリー症候群のノンコーディングRNAと標的と予測されるmiRNA発現との分子的繋がりを見出したい。一般的にはRNA/RNA間の配列依存的な相互作用から生じるものと考えられるが、仮に配列に相同性が見いだせない場合は、全く新たな分子機構によるものである可能性がある。その場合は、解析が非常に困難になると予想される。以上のように、プラダーウィリー症候群の病態責任因子としてのノンコーディングRNAの標的を同定する。
最後に、プラダーウィリー症候群のiPS細胞を神経細胞に分化させることができれば、見出した標的がヒトでも変化があるか否かをすぐに判定したい。ヒトでも保存されていれば医療に繋がる可能性を持つ重要な知見となり得るが、仮にマウスでしか見られない現象だった場合は、研究のインパクトは大いに下がらざるを得ない。

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公開日: 2015-05-28  

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