研究課題
若手研究(B)
我々はこれまでに、乳癌特異的に発現が亢進している遺伝子として機能未知糖転移酵素GTUF(GlycosylTransferase of Unknown Function)を同定し、RNA干渉法によりGTUF遺伝子の発現を抑制した際に乳癌細胞の増殖が顕著に抑制されたことから、GTUFは乳癌の細胞増殖に重要な分子であることを明らかにしている。そこで初年度は、GTUFによる乳癌細胞増殖機構を解明することを目的として以下の解析を行った。まず、siRNAによりGTUF遺伝子の発現を抑制したときの細胞周期の変化をFACS解析により調べたところ、GTUF遺伝子の発現を抑制することによりsubG1が増加していることが確認された。さらに、Western blot解析によりsubG1の増加に伴いPARPの切断が見られたことから、GTUF遺伝子の発現抑制はアポトーシスを引き起こすことが示された。また、GTUFはアミノ酸配列から2ヶ所のN結合型糖鎖修飾部位が存在することが推測されたため、N結合型糖鎖修飾阻害剤ツニカマイシン処理およびN結合型糖鎖修飾部位変異体解析によりGTUF自身の糖鎖修飾が機能に及ぼす影響について解析した。その結果、GTUFは細胞から分泌され、さらに分泌にはGTUF自身の糖鎖修飾が関与していることが示された。現在、GTUFによって糖鎖修飾される基質タンパク質の同定、GTUF自身が受けている糖鎖修飾構造の解明を試みている。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、GTUFの乳癌細胞における機能およびGTUF自身が受けているN結合型糖鎖修飾の役割を明らかにすることができたため、順調に進展していると考えられる。
今後は、以下の2点について解析を進める。1.GTUFによって糖鎖修飾される基質タンパク質を同定し、GTUFがどのようなメカニズムで乳癌細胞の増殖およびアポトーシスを制御しているか明らかにする。2.GTUF自身が受けている糖鎖修飾構造を明らかにし、構造と機能との関係について調べる。3.免疫染色により、GTUFの発現と乳癌の予後や悪性度との関係を明らかにする。
GTUFの細胞内での機能解析は進んでおり、研究全体としては順調に進んでいる。しかし、市販のGTUF抗体が乳癌細胞の内在性GTUFを検出できず、免疫染色を行うことができなかったことが理由として挙げられる。初年度に検討したGTUF抗体以外のGTUF抗体で乳癌細胞の内在性GTUFを検出することができた際には、免疫染色関連試薬を購入する。また、GTUFの細胞内での機能解析が順調に進んでおり、さらなる解析を進めるために、細胞培養関連試薬、タンパク質検出関連試薬も購入する。
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International Journal of Oncology
巻: 44 ページ: 427-434
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Nature Communications
巻: 4 ページ: 2443
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