研究課題/領域番号 |
25860243
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
苅谷 慶喜 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00458217)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インテグリン / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
平成26年度に実施した研究の主な成果としては、下記の二つが挙げられる。 1. β4インテグリンに付加されたN型糖鎖の癌細胞の増殖および運動への影響:癌細胞の運動および増殖におけるβ4インテグリン上N型糖鎖の寄与を調べるために、新たにN型糖鎖欠損β4インテグリン発現癌細胞の樹立を試みた。β4インテグリンを発現していないヒトメラノーマ細胞株MDA-MB435SにlacZ(コントロール)、野生型β4インテグリンおよびN型糖鎖欠損β4インテグリン発現ベクターを導入し、それらの発現細胞を樹立した。樹立した細胞の細胞増殖および運動について調べたところ、コントロール細胞およびN型糖鎖欠損β4インテグリン発現細胞は野生型β4インテグリン発現細胞に比べ、細胞増殖および運動能が有意に低かった。これらの結果はβ4インテグリンのN型糖鎖が細胞の増殖や運動に重要な役割を果たしていることを示唆する結果である。 2. β4インテグリン上N型糖鎖がα6β4インテグリン依存的シグナルに与える影響:α6β4インテグリンはPI3Kシグナルを活性化し、癌の悪性化を促進することが知られている。α6β4インテグリンが誘導するPI3Kシグナル活性化に対するβ4インテグリン上N型糖鎖の寄与を調べるために、上記1で樹立した細胞間のAkt活性化の度合いについて調べた。その結果、野生型β4インテグリン発現細胞に比べ、N型糖鎖欠損β4インテグリン発現細胞はAktのリン酸化レベルが低下していた。N型糖鎖欠損β4インテグリン発現細胞にPI3Kの活性型サブユニットを発現させたところ、Aktのリン酸化レベルの上昇とともに、細胞増殖および運動能が野生型β4インテグリン発現細胞と同程度まで回復した。この結果から、β4インテグリン上N型糖鎖はα6β4インテグリンが誘導するPI3Kシグナル活性化に関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度において、新たにN型糖鎖欠損β4インテグリン発現癌細胞を樹立し、本研究命題であるβ4インテグリン上N型糖鎖と癌細胞の増殖に関しての関係をクリアにすることができた。また、癌細胞増殖に関与するPI3Kシグナル経路にβ4インテグリン上N型糖鎖が関与していることについても証明できた。これらは申請書の研究計画どおりの進展である。したがって、現段階において研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1、β4インテグリン糖鎖による癌細胞アポトーシス回避メカニズム 2、β4インテグリン糖鎖の腫瘍形成および増殖能、アポトーシス回避能に対する影響についてin vivoでの検討 について解析をおこなっていく。 1については無血清あるいはアポトーシスを誘導するTRAIL処理を癌細胞におこない、β4インテグリン上N型糖鎖によりどのようにアポトーシスシグナルを回避しているのかについて樹立したN結合型糖鎖欠損β4インテグリン発現癌細胞株を用い検討する。具体的には、カスパーゼやNFkBの活性化などをFACSやウェスタンブロットにより検討する。 2については野生型およびN型糖鎖欠損β4インテグリン発現癌細胞を免疫不全マウスの皮下に移植した癌モデルを用いる。腫瘍サイズの測定や形成された腫瘍の切片を細胞増殖や生存、細胞死などに関連する分子の抗体にて染色をおこなうことで、糖鎖変化によりどのような機能低下が起きたのかについて判断する。また、これまでの結果を論文としてまとめ、β4インテグリン上N型糖鎖による新たな癌の増殖、生存、アポトーシス回避機構について報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞をケラチノサイトから癌細胞に切りかえたことで培地の購入費を抑えることができた。また、細胞死に関する実験を進めることができなかったため消耗品購入をおこなわなかったことも原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は最終年度であり、細胞死に関する実験も確実に行うため、その分の経費として使用予定である。具体的にはTUNNELアッセイのキット購入や抗体の購入に充てるつもりでいる。
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