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2015 年度 実施状況報告書

α6β4インテグリンによる癌の生存戦略機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25860243
研究機関福島県立医科大学

研究代表者

苅谷 慶喜  福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00458217)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードインテグリン / 糖鎖
研究実績の概要

平成27年度に実施した研究の主な成果としては、下記の二つが挙げられる。
1. β4インテグリンに付加されたN型糖鎖の腫瘍形成能、癌細胞の増殖および浸潤能への影響:
昨年度樹立した野生型およびN型糖鎖欠損β4インテグリン発現癌細胞を用いて、β4インテグリンに付加されたN型糖鎖が腫瘍形成能、癌細胞の増殖および生存、浸潤能に与える影響について調べた。その結果、コントロール細胞(β4インテグリン未発現)およびN型糖鎖欠損β4インテグリン発現細胞は野生型β4インテグリン発現細胞に比べ、in vivoでの腫瘍形成能や増殖能、in vitroでの細胞増殖および生存、浸潤能が有意に低下していた。これらの結果はβ4インテグリンのN型糖鎖が癌細胞の増殖や浸潤に重要な役割を果たしていることを示唆する結果である。
2. 癌の悪性化に関与するβ4インテグリン上N型糖鎖構造の同定および糖鎖を介した癌悪性化メカニズム:
ヒト皮膚扁平上皮癌および正常皮膚組織切片におけるN結合型糖鎖発現の解析をおこなうために、異なる糖鎖を認識するレクチンおよび抗β4インテグリン抗体を用いた蛍光二重染色をおこなった。その結果、正常皮膚組織に比べ、扁平上皮癌組織においてL4-PHAレクチンの反応が高くなっているとともに、β4インテグリンとの共局在が観察された。このことより、細胞の癌化に伴いβ4インテグリン上のβ1,6GlcNAc糖鎖が増加した可能性が考えられた。実際に癌化後のケラチノサイトや上記癌細胞においてβ4インテグリン上でのβ1,6GlcNAc糖鎖の増加が観察された。β4インテグリン上のβ1,6GlcNAc糖鎖にはガレクチン3が結合しており、その結合の阻害は癌細胞の運動や浸潤、増殖、生存、腫瘍形成能の低下を引き起こした。これらのことより、β4インテグリン上のβ1,6GlcNAc糖鎖とガレクチン3の結合がα6β4インテグリン依存的な癌細胞シグナルに重要であることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

樹立したN型糖鎖欠損β4インテグリン発現癌細胞を用いて、腫瘍形成能や形成した腫瘍内癌細胞の増殖についてin vivoでの検討を行うことにより、本研究命題であるβ4インテグリン上N型糖鎖と癌細胞の増殖に関しての関係をクリアにすることができた。また、癌の増殖に関与するβ4インテグリン糖鎖構造としてβ1,6GlcNAcを同定するとともに、ガレクチン3がβ1,6GlcNAcに結合し、架橋することで、癌の増殖に関与するβ4インテグリンシグナルを増強していることが証明できた。β4インテグリン上糖鎖とアポトーシスや薬剤耐性との関連に関する解析は計画通りに進んでいないが、これは増殖に関しての研究が予想以上に進んだため、そちらを優先したためである。したがって、現段階において研究はおおむね順調に進行しているといえる。

今後の研究の推進方策

研究期間延長によりおこなう研究は、樹立した細胞以外の癌細胞やガレクチン3KD癌細胞について同様の実験をおこない、その一般性について検討することである。さらに、将来的には、今回の研究で詳細な検討が行えなかったβ4インテグリン上N型糖鎖と癌細胞の薬剤耐性やアポトーシスに関する研究を行っていきたい。

次年度使用額が生じた理由

本年度までの研究により得られた成果をより確かなものとするための研究が必要となった。そのため、研究期間延長とそのための費用が必要となった。

次年度使用額の使用計画

実験の一般性を高めるために、これまでおこなった細胞の解析を複数種の癌細胞について同様におこなう。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2105 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Increased cerebrospinal fluid osteopontin levels and its involvement in macrophage infiltration in neuromyelitis optica.2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshinobu Kariya*, Yukiko Kariya, Toshie Saito, Shuhei Nishiyama, Takashi Honda, Keiko Tanaka, Mari Yoshida, Kazuo Fujihara, Yasuhiro Hashimoto
    • 雑誌名

      BBA Clinical

      巻: 3 ページ: 126-134

    • DOI

      10.1016/j.bbacli.2015.01.003.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] In situ visualization of a glycoform of transferrin: Localization of α2,6-sialylated transferrin in the liver.2015

    • 著者名/発表者名
      Yuka Matsumoto, Toshie Saito, Kyoka Hoshi, Hiromi Ito, Yoshinobu Kariya*, Masamichi Nagae, Yoshiki Yamaguchi, Yoshiaki Hagiwara, Noriaki Kinoshita, Ikuo Wada, Kiyoshi Saito, Takashi Honda, Yasuhiro Hashimoto
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 157 ページ: 211-216

    • DOI

      10.1093/jb/mvu071.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] N型糖鎖を介したβ4インテグリンシグナルは腫瘍の悪性化を促進する2105

    • 著者名/発表者名
      苅谷慶喜、顧建国
    • 学会等名
      第74回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2105-10-09
  • [学会発表] O-結合型糖鎖欠損によるオステオポンチン細胞接着活性調節は複数ヶ所のO-結合型糖鎖付加部位の欠失が必要である,2015

    • 著者名/発表者名
      今野翠、苅谷慶喜
    • 学会等名
      第74回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-10-09
  • [学会発表] ラミニン332による癌の悪性進展メカニズム2015

    • 著者名/発表者名
      苅谷慶喜
    • 学会等名
      第37回水疱症研究会
    • 発表場所
      福島
    • 年月日
      2015-09-27
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳脊髄液中オステオポンチンの視神経脊髄炎病態への関与2015

    • 著者名/発表者名
      苅谷由貴子、苅谷慶喜、斉藤利江、西山修平、本多たかし、田中恵子、吉田眞里、藤原一男、橋本康弘
    • 学会等名
      第47回日本結合組織学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-05-16
  • [学会発表] 糖鎖欠損によるオステオポンチンの細胞接着活性とリン酸化修飾への影響2015

    • 著者名/発表者名
      今野翠、苅谷慶喜、菅野真由美、苅谷由貴子、橋本康弘
    • 学会等名
      第47回日本結合組織学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-05-15
  • [備考] 福島県立医科大学医学部生化学講座

    • URL

      http://hashimoto-lab.org/

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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