研究課題
若手研究(B)
転写因子c-MycとNanogが、protein interactionを示す事は、HEK293細胞への共導入後の、共免疫沈降によって見出していた。そこで、まず、ES細胞を用い内在性のc-MycとNanogが、protein interactionを示すかを調べた、その結果、Nanogは、c-MycとのみならずN-Mycともprotein interactionを示す事が見出された。c-, N-MycはMaxと複合体を形成する事で機能するが、Nanogとの相互作用は、Max非依存的であった。Nanogがc-Mycのどの領域に結合しているかを調べた。HA tagged c-Myc deletion formが挿入されているプラスミドベクターを作成した。そのHA-c-Myc deletionベクターとFlag-NanogベクターをHEK293細胞へ共導入し、共免疫沈降によって結合の有無を調べた。その結果、Nanogは、c-MycのN末端に結合している事が見いだされた。非ステロイド性の抗エストロゲン剤であるタモキシフェンで活性が調節できるc-MycERをES細胞へ導入し、安定株を樹立した。その細胞株にタモキシフェンを添加すると、劇的な細胞死を示し、アポトーシスを起こしている事が見いだされた。しかし、その細胞死はN末端を欠失させると抑制された。c-MycがNanogのどの領域に結合しているかを調べた。Flag tagged Nanog deletion formが挿入されているプラスミドベクターを作成した。HA-c-Myc ベクターとFlag-Nanog deletionベクターをHEK293細胞へ共導入し、共免疫沈降によって結合の有無を調べた。しかし、明確に結合領域を決定する事は出来なかった。
2: おおむね順調に進展している
c-MycがNanogのどの領域に結合しているかを決定できなかった。しかしながら、Nanogがc-MycのN末端に結合する事や、高活性状態のc-, N-MycによるES細胞におけるアポトーシスは、N末端が必須であることを見出した。
c-MycがNanogのどの領域に結合しているかを、Nanogのdeletion formを作成する事では決定できなかった。そこで、Yeastのtwo-hybrid法を用い、c-Mycと結合できないNanogをスクリーニングする。ES細胞にc-MycERを導入した細胞株は、タモキシフェン添加時にアポトーシスを示すが、強発現Nanogによって抑圧されるか調べる。Max欠損ES細胞では、未分化の維持が損なわれる事とアポトーシスが起こる事を報告した。Esrrbは、ES細胞の自己複製に必要であり、iPS誘導を促進させる事が報告されている。Esrrbを強制発現させたMax欠損ES細胞でも、アポトーシスが抑制され長期的な培養が可能となることがわかった。そこで、①強発現EsrrbによってMax欠損ES細胞が示す未分化マーカーのタンパク質量・遺伝子発現の減少は抑圧されるのかを調べる。②分化マーカーの発現誘導も抑圧するのかを調べる。③強発現EsrrbによってMax欠損ES細胞が示すアポトーシスを抑制する事はTUNEL解析で見出した。そこで、更に活性化型カスパーゼ3と、DSBsの指標でもあるγH2AXも減少しているか調べる。Max欠損ES細胞の示すアポトーシスは、NanogまたはEsrrbの強発現によって抑制された。Max欠損ES細胞株が示すアポトーシスの原因はMax非結合型c-Mycであると考えている。そこで、1つの可能性としてNanogまたはEsrrbの強発現によるMax欠損ES細胞のアポトーシスの抑制は、NanogやEsrrbのそれぞれが、独自にc-Mycと結合するために、Max非結合型c-Mycの減少によってアポトーシスは抑制されている可能性を考えた。それ故、EsrrbもNanog同様c-Mycと直接相互作用しているのかを調べる事にする。
25年度の実験計画で示している、「c-MycとNanogが直接相互作用する領域の決定」において、申請時の予想では、もう少し条件検討に時間と、予算がかかる事を予想していたが、思った以上にスムーズに結果が出たため。また、上記計画以外にも、概ね実験がスムーズに進んでいるため。26年度の実験計画では、Esrrbとc-Mycタンパクの相互作用を調べる事を主題にしている。c-Mycに対する標的タンパクが、前年のNnogと異なりEsrrbである事から、抗体等の条件検討に予算がかかる事が予想される。それを見越して申請していたが、前年までスムーズに進んでいたペースが保たれるかはわからない事もあり、前年度分と合わせた助成金を請求した。
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