研究課題
若手研究(B)
変異型エピジェネティクス制御因子が胚性中心B細胞由来の非ホジキンリンパ腫の形成にどのように関与するか明らかにするため、本年度は腫瘍モデルの構築及び変異型遺伝子の導入実験を行った。まず脾臓より胚性中心B細胞(CD43陰性細胞)をMACSにてソートし、バーキットリンパ腫の原因遺伝子と考えられているc-Mycをレトロウイルスベクターにて発現させた後に移植を行った。その結果、がん抑制遺伝子であるInk4a/Arf遺伝子を欠損した胚性中心B細胞を腹腔内へ移植した時のみヒトバーキットリンパ腫様のリンパ腫をおよそ2か月で発症することが分かった。一方、野生型の胚性中心B細胞及び尾静脈移植をしたマウスはリンパ腫を発症しないことが分かった。つまり、c-Myc発現及びInk4a/Arf遺伝子欠損に加えて腹腔内への移植がB細胞の生着に重要であることが分かった。さらに、形成したリンパ腫は移植前に高発現していたFAS発現が消失していることが分かった。FASはBリンパ球の分化段階におけるセレクション時にアポトーシスへと働く膜タンパク質であるため、この分子の発現低下は腫瘍免疫機構の回避に重要な役割を果たすことが示唆された。さらに濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に高頻度で変異が報告されているヒストンメチル化酵素のEzh2やHDAC制御因子であるMEF2Bの変異型をsite-directed mutagenesis法にて作成し、レトロウイルスベクターを構築した。上記同様に胚性中心B細胞に発現して移植を試みた。しかしながら、5か月以上経過しても腫瘍形成が見られなかった。この結果から遺伝子変異は単独では腫瘍形成せず、c-MycやBcl2, Bcl6など高分化型リンパ腫で高発現が報告されている分子と協調的に働くことが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
これまで難しいとされていた成熟B細胞である胚性中心B細胞の培養及び遺伝子導入のシステムを構築し、さらにヒトバーキットの原因遺伝子であるc-Mycと高頻度に遺伝子欠損が見られるInk4a/Arfの欠損より、バーキットリンパ腫様のリンパ腫を発症することを改めて本研究にて証明した。この培養、遺伝子導入のシステムを用いれば、変異型エピジェネティクス制御因子であるEzh2やMEF2B、MLL2の発がんへの影響を解析する基盤が整ったといえる。
変異型エピジェネティクス制御因子を他の発癌因子とともに胚性中心B細胞へ導入し、移植することで発がんへの影響を調べる。またヒト培養細胞への導入実験及びその影響の解析を行う。発癌や悪性化への関与が認められた場合、ヒストン修飾のChip-seqやマイクロアレイ解析によってどの遺伝子が影響を受けたのかゲノムワイドに調べる。さらにリンパ腫を発症したマウスを用いて阻害剤やshRNAを用いた検討を行う。
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http://genereg.jp/index.html