本課題は、がん細胞の転移能と密接な関係にある「接着喪失時に誘導される細胞死(DICD)に対する抵抗性」の解明のために、DICDと糖代謝変化に注目して解析を行った。手がかりとして、正常ヒト乳腺上皮細胞にDICDを誘導した際、フルクトース6リン酸 (F6P)が蓄積する事を見出した。F6Pは解糖系とヘキサミン経路の代謝物であるが、接着の喪失は解糖系の抑制を起こさなかったため、後者が抑制される結果DICDが起こる事が予想された。そこでこの経路の律速酵素の阻害剤を用いて検討した結果、その抑制は非接着状態に関わらず細胞死を誘導した。従って、ヘキサミン経路の抑制がDICDの誘導に関わる可能性が示唆された。
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