研究課題
本年度は、最終年度としてこれまでに得られた小胞体・ミトコンドリア膜間領域(MAM)の機能破綻とSOD1, SIGMAR1の各遺伝子における変異に起因する筋萎縮性側索硬化症(ALS)病態との関連をまとめ、論文としてEMBO Molecular Medicine誌に投稿、発表した。また、論文化の過程において学内共同研究により新たにMAMの破綻を直接的に電子顕微鏡で観察し、変異SOD1マウスおよびSIGMAR1欠損マウスのいずれの運動神経細胞内でもMAMの量が減少していることを直接的に確認した。生化学的な解析では、MAMの機能的な破綻はSIGMAR1遺伝子の場合は小胞体側の変調、SOD1の場合はミトコンドリア外膜側の変調がMAMの破綻につながっていることを見出した。これらの成果により、ALS病態に於いてMAMの破綻が広く共通した病態であることが示唆された。また、SIGMAR1遺伝子産物であるσ1受容体(SIg1R)のアゴニストで処理するとSig1Rとイノシトール三リン酸受容体(IP3R3)との相互作用が回復し、カルシウムイオン放出の異常化が抑制され、培養細胞に対する変異SOD1の毒性が軽減された。更に、変異SOD1マウスにSig1Rのアゴニストを発症前より投与したところ、MAMの破綻が抑制され、発症を遅延させることに成功した。これらの結果から、MAMの機能維持を標的とすることが新たなALS治療薬の開発戦略として有用である可能性が示唆された。本研究を通じて、ALS病態におけるMAMの機能破綻の意義が明らかになったことから、今後、MAMの破綻に基づいて孤発性も含めた幅広いALSに共通した病態機序の解明とそれに基づく、治療戦略の開発が可能になると期待される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Molecular neurodegeneration
巻: 12 ページ: 2
10.1186/s13024-016-0145-9
EMBO Molecular Medicine
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10.15252/emmm.201606403
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20161108_riem.pdf