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2013 年度 実施状況報告書

染色体脆弱部位FRA3Bとパリンドローム不安定性

研究課題

研究課題/領域番号 25860256
研究種目

若手研究(B)

研究機関藤田保健衛生大学

研究代表者

加藤 武馬  藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (20387690)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードt(3;8)(p14;q24) / PATRR / パリンドローム / FRA3B / 染色体脆弱部位 / 染色体転座
研究概要

近年、パリンドローム配列によるゲノム不安定性が、染色体の構造異常を誘発することが知られており、パリンドローム配列を介した染色体転座が数多く報告されている。これまでにパリンドローム配列を介した再発性の染色体転座として、t(11;22)(q23;q11)、t(17;22)(q11;q11)、t(8;22)(q24;q11) が報告されている。本研究では、2例の非血縁の腎細胞癌患者の生殖細胞系列でみつかった染色体転座t(3;8)(p14;q24)の切断点を解析した。その結果、8番染色体の転座切断点は、t(8;22)の転座切断点と同じパリンドローム配列内に位置し、また3番染色体の転座切断点は、新規のパリンドローム配列に位置していることから、t(3;8)(p14;q24)染色体転座は、新規のパリンドローム配列を介した染色体転座であることを明らかにした。また、健常人精子DNAを鋳型にした転座特異的PCRを用いて、t(3;8)染色体が関与する様々な新生の染色体転座を検出し、パリンドローム配列同士を連結する染色体再構成が、一般的な転座発生のメカニズムであることを示した。3番染色体の転座切断点は、癌抑制遺伝子FHIT遺伝子内にあり、転座患者ではFHIT遺伝子が分断されることが腎細胞癌発生の原因と考えられる。一方、染色体脆弱部位FRA3Bも同じFHIT遺伝子内にあり、多くの癌組織で欠失などのゲノム再構成が見られる。しかし、3番染色体の転座切断点にあるパリンドローム配列は、同定された多くの欠失領域の外側に位置しており、FRA3Bの発現とは無関係であると思われた。これらの結果から、FHIT遺伝子領域で発生するゲノム再構成は、FRA3Bを介する体細胞性の染色体内再構成と、パリンドローム配列を介する生殖細胞系列の染色体間再構成の2つの異なるメカニズムによって発生していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまでにt(3;8)(p14;q24)転座の切断点を明らかにし、この染色体転座が新規のパリンドローム配列を介した再発性の染色体転座であることを明らかにした。またパリンドローム配列を介した染色体転座は、 複製を介したメカニズムと、複製を介さない精子形成時の特異的なメカニズムによるものという議論が長年されてきたが、本研究の研究結果は、パリンドローム配列を介した染色体転座が複製を介さないメカニズムであること間接的にだが証明した。これらの研究結果について、学会発表を行い、また論文を執筆、投稿している。予想以上に早く研究計画を遂行できた理由の1つとして、共同研究先であるフィラデルフィア小児病院のEmanuel博士の積極的に働きかけにより、検体の提供を協力して頂けたこと。また、本研究室では、以前より染色体転座の解析を得意とし、染色体異常のメカニズムを解明するための研究ノウハウを持っているため、予想以上に早く研究計画を遂行できたのだと思われる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究成果を論文にまとめ、投稿する。また今回の研究から、パリンドローム配列を介した染色体転座が、22q11にあるパリンドローム配列を介したものだけではないことが分かり、また多くのパリンドローム配列が関与した染色体転座が精子形成過程中に発生していることが分かった。今年度は、精子形成過程中に発生する新生転座を網羅的に検出する実験方法を確立し、この染色体転座の発生メカニズムを明らかにする。また精子形成過程中に繰り返し発生する、パリンドローム配列を介した染色体転座は、パリンドローム配列にDNA切断が高頻度に発生することによるのか、もともと核内でパリンドローム配列同士が近接していることによるのか、もしくは、離れた位置にあるパリンドローム配列を近づけてくる未知のメカニズムがあるのか、などを順次明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

前年度の研究が当初の計画以上に進展し、論文作成では英文校閲を依頼せずに執筆したため、主に人件費を次年度へ繰り越した。
差引額の71,515円は主に試薬、消耗品として使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Two sequential cleavage reactions on cruciform DNA structures cause palindrome-mediated chromosomal translocations2013

    • 著者名/発表者名
      Inagaki H, Ohye T, Kogo H, Tsutsumi M, Kato T, Tong M, Emanuel BS, Kurahashi H
    • 雑誌名

      Nature communications

      巻: 4 ページ: 1-10

    • DOI

      10.1038/ncomms2595

    • 査読あり
  • [学会発表] t(8;22)(q24.1;q11.2)の2家系2014

    • 著者名/発表者名
      加藤武馬、Divya Mishra、稲垣秀人、大江瑞恵、堤真紀子、池田真理子、森貞直哉、飯島一誠、城戸康宏、坂爪悟、古庄知己、涌井敬子、福嶋義光、倉橋浩樹
    • 学会等名
      第5回東海小児遺伝カンファレンス
    • 発表場所
      名古屋市立大学
    • 年月日
      20140214-20140214
  • [学会発表] 染色体転座頻度と染色体間距離の因果関係2013

    • 著者名/発表者名
      加藤武馬、稲垣秀人、大江瑞恵、堤真紀子、倉橋浩樹
    • 学会等名
      第36日本分子生物学会
    • 発表場所
      神戸ポートピアホテル
    • 年月日
      20131205-20131205
  • [学会発表] FRA3B and the Palindromic AT-rich repeat2013

    • 著者名/発表者名
      Takema Kato, Molly B. Sheridan, April M. Hacker, Hidehito Inagakai, Thomas Glover, Sharon Plon, Harry Drabkin, Robert Gemmill, Beverly S. Emanuel, Hiroki Kurahashi
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第58回大会
    • 発表場所
      仙台 江陽グランドホテル
    • 年月日
      20131121-20131121
  • [学会発表] 染色体脆弱部位FRA3Bとパリンドローム配列2013

    • 著者名/発表者名
      加藤武馬
    • 学会等名
      第45回藤田学園医学会
    • 発表場所
      藤田保健衛生大学
    • 年月日
      20131003-20131003
  • [学会発表] パリンドロームを介した染色体転座の発生メカニズムの解明2013

    • 著者名/発表者名
      加藤 武馬、稲垣 秀人、倉橋 浩樹
    • 学会等名
      新学術「ゲノム支援」拡大班会議
    • 発表場所
      神戸ポートピアホテル
    • 年月日
      20130828-20130828

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公開日: 2015-05-28  

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