研究課題
パリンドローム配列が染色体の構造異常を誘発することが知られており、パリンドローム配列を介した染色体転座がt(11;22)(q23;q11)をはじめとして数多く報告されている。両転座染色体上の切断点には、数百塩基対のPalindromic AT-Rich Repeats (PATRRs)と呼ばれる配列が存在しており、PATRRのゲノム不安定性が染色体転座を誘発していると考えられている。PATRRはその配列の特性から、PCRやクローニングの困難な配列であるため、データベースに全長の配列が登録されておらず、切断点の解析が困難である。本研究では、t(8;22)(q24;q11)転座の切断点の解析を目的として、8番染色体のPATRR配列の全長を含むPCR産物を、次世代シーケンサーを用いてdeep sequenceすることで解読に成功し、多くの多型の存在を同定した。次に非血縁の2症例のt(8;22)転座の結合部を解析したところ、以前に報告されたt(8;22)転座とほぼ同じ切断点を持つ、PATRRを介した反復性転座であった。転座切断点は対称型PATRRの中央部であり、小さな欠失を伴って、マイクロホモロジーを介して結合していた。面白いことに、der(8)とder(22)を比較すると、結合部の配列が完全に同一であることが分かった。この結果より、 本来独立して発生するはずのder(8)とder(22)が、互いに協調しながら発生したことが推測される。以上より、PATRRを介した染色体転座は、十字架型の2次構造を形成したPATRR同士が染色体の切断を介さずに先行して結合し、 そのあと切断され2種類の派生染色体が発生するという新しいメカニズムを提唱した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
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