研究課題
大規模ゲノム解析技術を用いた染色体構造解析を行うため、昨年度に引き続き、新しいゲノム解析技術を用いた日本人一般集団の染色体ゲノム構造マップの検討を行っている。一般集団を代表する『正常』の染色体構造多型として、集団で世代を超えて維持されうる染色体構造異常にとくに注目する。具体的には、本計画では本人・出産した児の双方に特定の染色体異常による疾患が疑われなかった成人女性を対象に検討することで、検出された遺伝学的な多型はすくなくとも生殖に大きな影響がなく次世代に維持されうると考えている。これまでに収集した400人あまりの女性サンプルについて、マイクロアレイ技術によって検出されたコピー数変化(CNV)領域を比較検討を行い、さらにリアルタイムPCR法ならびにPCR法によらないコピー数検出を行うNanoString社のnCounterなどの新しい技術を用いてCNV検出の実効性について検討を加え、学会などで報告してきた。平成27年度には、次世代シーケンス技術(NGS)を用いて日本人データを収集し、これらのCNVの情報をもとに染色体構造解析の検討を行うべく準備をすすめている。これまでに、イルミナ社のシーケンス技術(HiSeq)から出力されるデータを検討し、配列の変異、欠失、重複を検討できるパイプラインの構築を行い、リード内にある配列の変化は、ダイレクトシーケンスなどによって検出の実効性を確認できている。リファレンス配列に一致しないNGSのリードにふくまれ、CNVの断端と想定される配列を検討するプロトコール作りをすすめている。
3: やや遅れている
平成25年度に引き続き、当該年度に解析したデータを解析している。その詳細について追加の解析を継続中である。次世代シーケンサー(NGS)データを用いた解析については、研究計画時点ではヒトデータの前にマウスサンプルによるデータを収集しモデルデータでの解析を行う予定であったが、本研究の実施に使用できる費用・機材のリソースが限られているため、そもそもの本研究の目的であるヒトゲノム解析にリソースを可能な限りまわすよう努力している。平成26年度は解析の十分な実効性があるか検討をくわえ、これまでに得られているNGSでのヒトゲノム情報をつかった予備解析によってヒトの染色体構造変異解析のめどがたったため、実際の染色体構造変異解析はヒト試料からの実施のみを予定することとしている。現在までに、必要十分なサンプル収集が終了したが、構造変異解析のターゲットとすべきCNVを確認するため、アレイによって検出されたCNVを複数の手法で再検討している。もっとも費用のかかる次世代シーケンサー解析の実施に慎重を期したため、ヒトサンプルをターゲットにしたNGS解析は平成27年度にまとめて実施する計画である。平成27年度中にデータ収集を行い当初予定していた染色体構造異常の解析を行うことは十分可能と考えている。
これまでに、本研究の特色である『正常』サンプルとしての日本人女性サンプル収集と、検討の足場となるべきマイクロアレイ法によるCNVデータの解析とそのデータ収集が終了している。予定していた次世代シーケンサーによる大量配列データのバイオインフォマティックス解析についても一定のめどがたった。平成27年度は、対象サンプルの次世代シーケンサーによるデータを収集し、ゲノム構造変異の配列解析を抽出する。疾患に関連した構造変異との理解を深めるため、抽出した断端の配列情報とこれまでに明らかになっているゲノム構造変異の断端およびその周囲配列との比較検討を行いゲノム構造異常の発症機序のモデルも検討する。これらの解析が、将来的な染色体異常による疾患の理解につながることを期待している。
平成26年度の解析として、次世代シーケンサーによるマウスゲノムの解析を予定していた。しかしながら、ヒトゲノムの解析データをもとに、構造変異領域の解析の可能性を検討していたところ、ある程度の解析のめどがたったため、モデル動物あるいは対象以外のヒトのゲノム解析を行うよりは、日本人女性の対象サンプルの解析をより多く行う方がよいという結論に達し、平成26年度中にはNGSデータ収集よりもバイオインフォマティックス処理の検討に時間を割き、試薬などの支出が減った。平成27年度には対象サンプルの次世代シーケンサー解析を行うが、昨今の為替レートの変動のため輸入資材である試薬価格も上昇しており、NGSにかかる試薬ないし解析費用がより多く必要となると予想される。
前述のように平成27年度に繰り越した費用は、主に次世代シーケンサーの試薬、解析のための計算機システムの利用に引き当てる。すでに試薬の一部の購入を検討しているが、計画当初より、解析試薬の費用は上昇しており平成26年度の繰り越し分、平成27年度分の助成金分とあわせて使用する必要がある。
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Journal of Human Genetics
巻: 59 ページ: 326-331
10.1038/jhg.2014.27