EBV関連胃癌におけるウイルス由来microRNAの意義を解明するために、以下のような研究を行った。EBV関連胃癌の外科切除材料を用いて、real time RT-PCR法により、ウイルス由来microRNAの網羅的発現解析を行い、発現の高いmicroRNAを見出した。同時に胃癌以外のEBV関連腫瘍(上咽頭癌、悪性リンパ腫)の生検材料を用いて、いくつかのEBV由来microRNAの発現について胃癌における発現量との比較を行った。EBV関連胃癌で発現の高いEBV由来microRNAのシード配列から予測される標的遺伝子を、公開されているデータベースや標的遺伝子予測ソフトウェアを用いて検索した。その結果、複数のアポトーシス関連遺伝子が候補として挙がり、その中の一つであるアポトーシス促進蛋白Bidに着目し、さらなる解析を行った。In vitroの実験により、EBV関連胃癌のモデルとなる細胞株では、EBV感染によりBidの発現が低下していることが明らかとなった。さらに、EBV由来のmicroRNAであるebv-miR-BART4のシード配列と相同となる配列がBidの3’非翻訳領域内に含まれており、このmicroRNAがBidの蛋白への翻訳を抑制していることが予測され、レポーターアッセイにより、これを証明した。さらに、EBVに感染していない胃癌細胞株にebv-miR-BART4を導入することにより、Bidの発現が低下し、その結果、これらの細胞株においてアポトーシスが抑制されていることを複数の胃癌細胞株で明らかにした。 以上の結果から、EBV関連胃癌においてはEBV由来のebv-miR-BART4がBidの発現抑制を介して、アポトーシス抵抗性を獲得していることが示された。
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