研究課題/領域番号 |
25860263
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 麻理子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50645710)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | EVI1 / 膵癌 / KRAS / microRNA / 胃上皮化生 |
研究概要 |
1) EVI1-KRASネットワークの解明およびEVI1の新規下流経路の同定 膵前癌病変早期に発現する腫瘍促進的分子として申請者が同定した転写因子EVI1が、膵発癌において重要とされるKRAS経路に対して何らかのinteractionを示すという作業仮説を解明する目的として、EVI1に対するsiRNAを用いたノックダウン実験などにより膵管上皮細胞と膵癌細胞におけるEVI1の発現抑制がKRASのmRNAおよびタンパクの発現量を低下させることを示し、さらにKRAS経路の中では特にERK経路を抑制することでcyclin-dependent kinase inhibitor p27Kip1の発現を上昇させ、細胞増殖をコントロールしていることを明らかにした。 2) EVI1発現機構の同定: EVI1が膵発癌早期から発現することに着目し、その発現を制御する上位因子として、NFκB等の炎症関連分子、あるいはメチル化、アセチル化、microRNA等のエピゲノムの修飾などについて細胞株実験にて検討を行っている。 3) EVI1発現と臨床病理学的検討: 申請者は224例の膵腫瘍に対してEVI1の免疫組織学的検討を行ったが、さらにサンプル数を増やしており、膵癌前癌病変のIPMN・MCN・PanINおよび浸潤性膵管癌のtissue microarrayを作成し、EVI1発現の検討を行っている。また、比較的稀な膵腫瘍としてserous cystic neoplasm, acinar cell carcinoma, pseudopapillary neoplasmに対して、さらに、膵腫瘍との類似性、近似性が指摘されている胆道系腫瘍においてもEVI1発現検討を行っている。現時点では、EVI1は膵管上皮由来と考えられているIPMN・MCN・PanINおよび浸潤性膵管癌、胆管上皮由来の腫瘍では高発現する一方で、由来の同定できていないその他の膵腫瘍においては発現が殆ど見られないことが分かった。今後、臨床データと照らし合わせてさらに臨床病理学的意義を追及していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)EVI1-KRASネットワークの解明およびEVI1の新規下流経路の同定 EVI1が膵発癌に重要なKRAS経路に作用し、発癌促進に寄与していることを示すことができた。また、EVI1の直接的なターゲットとなる下流分子がEVI1とKRASとの間をつなぐことも同定しつつあり、EVI1-KRASネットワークの解明および膵発癌において意味のあるEVI1の下流分子の解明の上で重要な結果である。 2)EVI1発現機構の同定: EVI1発現機構として上流分子に注目しているが、上記1)で同定した下流分子がEVI1発現にフィードバックをかけている可能性を同定しつつあり、EVI1発現機構の解明の一つの手掛かりと考えている。 3)EVI1発現と臨床病理学的検討: 膵腫瘍のサンプル数を増やし、また希少膵腫瘍症例も検討に加えることで、EVI1が膵管上皮の癌化に重要であることがわかりつつある。また膵と発生的に近似した胆管上皮系腫瘍においてもEVI1発現が見られることを同定しつつあり、胆膵腫瘍の解明に重要と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
1)EVI1-KRASネットワークの解明およびEVI1の新規下流経路の同定 膵腫瘍においてはEVI1-KRAS-p27経路を制御することが分かったが、EVI1ノックダウン膵癌細胞株および膵管上皮細胞株から得たマイクロアレイデータをもとに、EVI1下流のその他の重要な経路を探る。 2)EVI1発現機構の同定: 細胞株を用い、サイトカイン依存性にEVI1発現が変動するか、あるいはEVI1発現と時期を同じくして過剰発現を示すような膵発癌早期に重要な分子を膵管女卑細胞株や膵癌細胞株で過剰発現させることでEVI1発現が変わりうるかを検討し、膵発癌早期にEVI1発現が上昇する機序を探る。 3)EVI1発現と臨床病理学的検討: 増やしたサンプル数を基に臨床病理学的データと照会し、EVI1発現の意義を追及していく。また胆道系腫瘍においては膵腫瘍との類似性と相違点に注目してEVI1発現の検討を行っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に投稿した論文oncogeneの出版に要する経費が次年度請求となったため、次年度に繰り越しが必要となった。 oncogeneの出版費用に充当する。
|