研究課題/領域番号 |
25860266
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
尾山 武 金沢大学, 医学系, 助教 (00515314)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HER2 / ERBB2 / NEU / heterogeneity / array CGH / epigenetics / methylation / LCM |
研究概要 |
ヒト胃癌で見られる腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示しうる原因としてエピジェネティクス、特にDNAメチル化の関与を示す目的で以下の実験を行った。 本学附属病院病理部に保管されている病理検体に対して検索を行うことにより、患者様の同意が得られている胃癌検体のパラフィン包埋ブロックおよびその臨床医学的・病理学的情報を入手した。これらの症例のうち免疫組織化学的検討において抗HER2抗体陽性のものを選び出し、その中から腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示すものを少数ではあるが選出した。 腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示す胃癌症例に対し、HER2タンパク発現陽性と陰性部分の薄切切片からLaser Captured Microdissection (LCM)法を用いて、あるいはトリミングにより、間質細胞の混入が少ない腫瘍細胞塊を選別し採取した。それらから分子生物学的方法による解析に十分な品質、量のゲノムDNAを抽出することが出来た。そこでHER2関連遺伝子や既知の胃癌関連遺伝子を含む遺伝子の状態を網羅的に検索する目的でComparative Genomic Hybridization (CGH)法を行うことにより、HER2タンパク発現陽性と陰性部分のゲノムDNAの状態を比較した。その結果、複数の染色体において広範囲な遺伝子のコピー数増加や減少が観察された。その中にはHER2タンパク発現陽性と陰性部分間においてコピー数の増加あるいは減少の状態が異なっている遺伝子があり、それらはコピー数に対する腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示していると考えられる。これらの遺伝子のうち、これまでに報告のないHER2関連遺伝子のコピー数増加が認められたので、この遺伝子のDNA増幅の定量やその頻度の算出、promoter領域のDNAメチル化の状態、RNAの発現の定量やその頻度およびタンパクの発現の頻度等を解析し、そのデータを蓄積している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本学附属病院病理部に保管されている胃癌症例のうち、患者様の同意が得られており、その臨床医学的・病理学的情報が入手できた胃癌検体のパラフィン包埋ブロックからHER2遺伝子に対する腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示すものを少数ではあるが選出した。それらの胃癌の腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示す部分から、種々の解析に十分な量と品質のDNAを抽出した。HER2およびその関連遺伝子、既知の胃癌関連遺伝子の状態を知る目的で、Array-based Comparative Genomic Hybridization法を行うことにより、腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示す遺伝子を含む多数のコピー数の変化した遺伝子の情報を得ることができた。そのなかには、これまでに遺伝子増幅が報告されていないHER2関連遺伝子が認められたため、その遺伝子に対して胃癌検体100例を目標としてFluorecence in situ Hybridization (FISH)法によるDNAの増幅の確認およびMethylation Specific PCR (MSP)法およびBisulfite Sequence法を用いた遺伝子のpromoter領域におけるメチル化の状態の解析、Real-time RT-PCR法を用いたRNAの発現の定量および頻度の解析、免疫組織化学的方法によるタンパクの発現頻度の解析を行っている。以上のデータを整理し、予後などの臨床情報や分化度および深達度などの病理学的情報との関連性についても検索し、学術論文として投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト胃癌で見られる腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示しうる原因としてのエピジェネティクスの関与を示すことを目標として実験を開始したが、その過程において遺伝子を網羅的に解析することの必要性を強く感じるようになった。 そこで今年度に行ったHER2遺伝子に対する腫瘍内(ヘテロ)不均一性を示す複数の腫瘍に対して、HER2タンパク発現の陽性部分および陰性部分からゲノムDNAを抽出し、それぞれに対してArray-based CGH法による遺伝子のコピー数増加、減少および点突然変異などの遺伝子変異の有無を検索する。さらに可能であれは上記のゲノムDNAに対して遺伝子のpromoter領域のメチル化の状態を網羅的に検索する目的でCpG island microarray法を行う。 一方で、今年度の実験においてDNAの増幅が示唆されているHER2関連遺伝子に対して、来年度も引き続き複数の胃癌検体に対しFISH法によるDNAの増幅の確認およびMSP法およびbisulfite sequence法を用いたメチル化の状態の評価、Real-time RT-PCR法を用いたRNAの発現の量および頻度の評価、免疫組織化学的方法によるタンパクの発現の頻度の解析を行う。この遺伝子に対する情報を整理し、生命予後などの臨床情報・分化度などの病理学的情報との関連性についても検索していく。さらにこの遺伝子に対して複数の胃癌細胞株を用いた遺伝子導入や発現抑制実験を行い、遺伝子の機能についても確認する。この遺伝子に対する遺伝子改変マウスを購入または作成し、in vivoにおける腫瘍形成に対する機能解析を行うことも検討している。
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