研究実績の概要 |
2010年末に神経堤由来腫瘍以外の悪性腫瘍で初めてとなる卵巣明細胞癌でのクロマチン再構成因子のARID1A変異が発見され、引き続いて胃癌、原発性肝臓癌、膀胱癌、大腸癌、肺癌などでの遺伝子変異が、報告されている。しかし、遺伝子変異が報告されているものの、異常な発現遺伝子産物が、どのように腫瘍発生に関係しているかについては未解明であり、その下流に存在する分子メカニズム、制御のためのターゲットとなりうる分子群は明らかになっていない。 本研究で濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と、各100余症例におけるクロマチン再構成因子ARID1A(AT-rich interacting domain 1A, SWI1, BAF250, p250,p270)遺伝子の変異を検討し、その影響下にある癌化、あるいは癌化促進遺伝子群を網羅的遺伝子解析で検出を試みた。 その結果、転写伸長因子Elongin Aの発現異常とARID1A遺伝子変異によるクロマチン再構成因子複合体機能不全が密接に関係していることが示唆される結果が得られた。 興味深いことに、ARID1Aの完全欠損は、むしろElonginAの発現異常に寄与せず、面積比10~25%程度の、ARID1A不完全消失例で、顕著であった。 また、興味深いことに、ARID1Aの発現低下は十二指腸濾胞リンパ腫で、高度で、完全消失例がみられた。このことは十二指腸濾胞性リンパ腫が、節性濾胞性リンパ腫とことなる腫瘍化メカニズムを備えていることが示唆された結果であると考える。
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