研究概要 |
lymphoplasmacytic lymphoma(LPL)の細胞株であるMWCL-1を用いて(1)フローサイトメトリーによるB細胞性(CD20), 形質細胞性(CD138)表面マーカー解析、(2)ソーティング・培養、(3)活性酸素除去能・FoxO3a発現状態、(4)in vitroコロニー形成能、(5)アポトーシス細胞・老化細胞の割合について調べた。(1)では量的にCD20(+)CD138(-)>>CD20(-)CD138(-)>CD20(+)CD138(+)>>CD20(-)CD138(+)であった。(2)ではCD20(-)CD138(-), CD20(+)CD138(-), CD20(+)CD138(+)をソーティングして培養したところ、CD20(-)CD138(-)からCD20(+)CD138(-)及びCD20(+)CD138(+)が産生されoriginal MWCL-1とほぼ同様の細胞集団になったが、CD20(+)CD138(-), CD20(+)CD138(+)からはCD20(-)CD138(-)が産生されなかった。(3), (4), (5)ではCD20(-)CD138(-)が活性酸素除去能・in vitroコロニー形成能ともに最も高く、アポトーシスにも最も抵抗性であった。なお、核に局在して発現するFoxO3aは大部分CD20(-)CD138(-)で認められ、アポトーシス細胞・老化細胞の割合はCD20(+)CD138(+)が最も高かった。また、LPLの臨床検体でもアポトーシス細胞について調べたところ、アポトーシス細胞は大部分CD20(+)CD138(+)であり、細胞株の結果と同様であった。以上よりCD20(-)CD138(-)はLPLにおける腫瘍幹細胞の候補と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
LPLはB細胞性(CD20)および形質細胞性(CD138)マーカーを発現するindolentなリンパ腫であるが、CD20, CD138の両方とも発現しない細胞が少数存在し、腫瘍幹細胞の候補と考えられる。現在、CD20, CD138の両方とも発現しない細胞に特異的なマーカーの検索を進めている(ショットガン解析)。また、CD20(+)CD138(-), CD20(+)CD138(+)からCD20(-)CD138(-)が可塑的に産生される特殊な条件がないかについても検討している。これらの検索・検討により新たな治療戦略を開発しようとしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
LPLの腫瘍幹細胞を調べるうえでかかる費用は抗体などの試薬代、消耗品費が大部分を占める。これらの費用は研究の試行錯誤に依存し、研究を進めてみないと幾らかかるか厳密には分からない。結果、次年度使用額が0より大きくなった。 抗体などの試薬代、消耗品費を当初の使用計画以上に使う余裕があるので、研究の試行錯誤をもっと行う。CD20, CD138の両方とも発現しない細胞に特異的なマーカーの検索、CD20(+)CD138(-),CD20(+)CD138(+)からCD20(-)CD138(-)が可塑的に産生される特殊な条件の検討に関して、様々な候補・条件を調べてみる。
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