研究課題/領域番号 |
25860271
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
田中 瑞子 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (40583638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺癌 |
研究概要 |
S100ファミリータンパクは、EF-handをもつカルシウム結合タンパク群であり、現在25のメンバーからなる。癌とS100ファミリータンパクの関連についてはS100A4を中心として現在までに1000以上の報告があり、肺癌、大腸癌、乳癌など多くの癌で発現し、癌細胞の運動、増殖や上皮間葉移行などの調節に関わることが知られている。 S100A14は2004年にクローニングされた新しい分子であるが、その機能はほとんど解明されていない。本研究では、S100A14の1) 転移や浸潤を促進する分子メカニズムの解明、2) ヒト肺癌組織での発現と予後との相関についての検討、3) 血清中タンパクの検出や抗体を用いた腫瘍の浸潤・転移抑制効果の検討 を目的とする。これらの研究によって、転移・浸潤の新たなメカニズムを解明するとともに、S100A14を肺癌の診断・治療へ応用する基盤を確立する。 我々はこれまでに、外科的に摘出されたヒト肺非小細胞癌標本におけるS100A14の発現を検討した。その結果、症例の約50%にS100A14の陽性像が認められ 高発現する症例は、発現の低い症例に比して生命予後が有意に低いことが明らかになった。さらに、ヒト肺癌細胞株を用いた実験において、S100A14は主に細胞膜に局在し、一部は培養上清中にも存在すること、癌細胞の浸潤や遊走を促進する機能を持つことを発見した。これらのデータから、S100A14は癌の浸潤や転移能を増強し、患者の予後を不良にする新規の悪性形質関連分子であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト肺癌症例の免疫腺組織化学的判定では、S100A14発現と予後不良との相関が確認されている。また、S100A14結合タンパクと下流シグナルの同定については、我々はS100A14の結合タンパクのひとつとしてアクチンを同定した。一方、下流シグナルについてはMAPK, PI3K , Akt, Rhoなどについて解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト肺癌細胞株をもちいて、S100A14が癌細胞の浸潤を促進するメカニズムについて、そのシグナル経路の探索を進める。また血清マーカーとしての可能性を探るため、マウスに細胞株を移植し、血清からELISAによるS100A14検出を試みる
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はマウスの使用が少なかったため残額が発生した。 試薬および実験動物の購入費用として使用する。
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